公開セミナー「体験ゲームとお話で知る世界の様子」
〜今、フェアトレードが求められている〜
イベント報告 プラザ・ネパール・デイ −食と文化と国際協力−

毎年秋にあ〜すぷらざで行われるネパールデイ。2004年は10月24日に賑やかに行われました。ネパリ・バザーロと(財)神奈川県国際交流協会の共催で、全館ネパール一色になりました。留学生トークタイム、スタンプラリー、料理教室、紙漉きや木彫りスタンプのワークショップ、コーヒーロースト体験、レストランでの特別メニュー、パンチャ・ラマさんのコンサートなど充実したプログラムでした。
 「体験ゲームとお話で知る世界の様子」と題した公開セミナーでは、ハンガーバンケット、フェアトレードの欧州の動きとグローバルジャーニーの説明、マハグティのスミットラさんの講演を行いました。60名を超える参加者を迎え、大盛況でした。

<ハンガーバンケット>

 磯野昌子さん(元東和大学国際教育研究所講師)の進行で、参加者が順番にカードを引き、3つのグループに分けられました。今回はネパール版ハンガーバンケットで、富裕層のテーブルには置ききれないほどのネパール料理が並びました。キーマカレー、タンドリーチキン・・・他のグループが興味津々と見つめる中、次々と胃袋に納まっていきます。中間層にはチョウメン(焼きそば)が配られましたが、あっという間に食べ終わってしまいました。そして貧困層の皿には、ディーロ(蕎麦がき)がひと匙ずつ盛られ、床に敷かれたダンボールに座って食べました。
 食事のあとは感想を発表し合いました。
【富裕層】「自分たちだけ食べるのは申し訳なかったけれど、知らない人に勧める勇気もなかった」「珍しいご馳走だったので味見がしたくて次々食べてしまった。自分のテーブルに食べきれないほどあるのに、貧しいグループの料理まで食べてみたくなり、満たされていても、ないものは欲しくなるのだと実感した」
【中間層】「大人数なので少ない量でもまあいいかと思えた」「富裕層のご馳走は気になったが、視界になければこれで満足していただろう」
【貧困層】「ディーロは、今流行の自然志向としてはそばの香りがして美味しかったが、貧困層としては塩味も甘みもなく喉を通らなかった」「皿を持って並んで給仕してもらったのは施しをもらうようで惨めだった」「おすそ分けを持ってきてくれた時は自分の分もあるのか目が血走った」
 すぐ隣に、食べ物に困っている人がいてもなかなか手を差し出すことができない体験をし、これが国同士ならばどうなのか、それぞれが考えるきっかけになったようです。相手が見えないと、その格差にも気付かず、関心も持ちません。では、気付いて援助をすれば解決するのでしょうか。なぜ世界の人々に格差が生まれるのかを考え行動することの必要性、その行動のひとつとしてフェアトレードがあることが、磯野さんから語られ、それぞれの思いを抱いて宴は終了しました。
ハンガーバンケット(飢餓の宴)とは、イギリスのオックスファムが作った国際理解のための教材です。富裕層、中間層、貧困層に分かれ、食糧事情の不平等を身をもって味わうことで、貧富の格差を実体験することをねらいとしています。


<スミットラさんのお話>

 後半は、フェアトレード団体マハグティでデザイナーとして働くスミットラ・バイジュさんのお話でした。
「ネパールでは、前半のハンガーバンケットと同じ状況が現実に起こっています。政治的混乱や洪水などの自然災害も原因していますが、金持ちはさらに金持ちになり、貧しい人はますます貧しくなっています。混乱の中で、最低限の生活も送れなくなった人々に反感や不満が蓄積されています」
 また、スミットラさんは興味深い2つの例え話を紹介してくれました。
「大金持ちの子どもが通う学校で、先生が貧乏な人の暮らしはどういうものなのか想像してごらんと言いました。ある子は、『あるところにとても貧乏な人がいました。その人のドライバーも貧乏でした。コックも貧乏でした』と言いました」
 もう1つのお話は、「とても貧乏な家がありました。ある日雨が降り、壊れた屋根から家の中に雨が漏れてきました。何もない貧乏な家だったので、母親が雨から子どもを守るために、唯一家にあった古い新聞紙を子どもに巻きました。その子は母親に言いました。『僕の家には紙があるからいいけど、貧乏な人はどうやって雨を防ぐんだろうね』」というものでした。
 「貧しい」ということを想像するのは、誰にとっても難しいことを実感させられるお話でした。


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