国際理解教育とフェアトレード 人脈が生み出した開発教育教材
「カレーキット」


2002年度から学校週5日制と「総合的な学習の時間」が実施され、学びの場が社会に広がりつつあります。その動きの中で、カレーをテーマに食文化を学ぶスーツケース総合学習貸出教材「カレーキット」が注目を集めています。企画段階からネパリ・バザーロも関わり、フェアトレード生産者の協力も得て、フェアトレードと国際理解教育の研究が交わった成果になりました。開発経緯と今後の展望を、開発メンバーを代表して小山紳一郎さんに伺いました。

編集部 「カレーキット」の貸出が人気ですね。スーツケースに入れてあるなど、かなりユニークな発想に感じますが、その経緯を教えてください。

小山 この発想は、オランダのハーグ市立博物館が、ニジェール(アフリカ)の民族衣装や生活用具をトランクに詰めて学校に貸出し、派遣された学芸員がトランクから取出したモノを子どもたちに説明するアウトリーチ(注1)活動を長年続けてきたことに始まります。子どもたちの教育は、学校だけではなく、博物館等の生涯学習施設を含めた地域全体で考える必要性から生まれました。

編集部 このような貸出教材は、日本にもありますか?

小山 国立民族博物館(注2)の貸出教材「みんぱっく」、NGOが開発したBOX教材、「パレスチナの箱」「バングラBOX」「フィリピンBOX」、バッグにモノを詰めた教材や、土器セットのように科学的教材まで様々にあります。

編集部 「カレーキット」は、どのようにして作られたのですか?

小山 教育や国際交流に携わる人々を中心に、スーツケース総合学習教材開発研究会が2000年9月に発足し、スーツケース教材(貸出キット)の開発を研究テーマとすることになりました。神奈川県立地球市民かながわプラザが協力、支援を行い、プラザ施設の展示連携も考慮し、「食」を切り口に国際理解を深める研究を行いました。ここから、学校連携のプログラムも始まりました。

編集部 21世紀を生きる子どもたちにとって大切な資質は、異文化の共存、共生と言われています。その面で、この開発教材はいかがですか?

小山  カレーは、学習者である子どもたちが最も好んで食べるものです。人気のあるカレーを通して、食べ方の違いや辛さの違いなど、様々な違いを知ることで、自然に異文化への理解を深めることができます。

編集部 カレーだけではなく、様々な衣装、食器、その背景を紹介するビデオなど、豊富な教材と解説書が入っていて、とても便利ですね。今後、他の開発教材にはない特長を出すことも検討されていらっしゃいますか?

小山 花より団子という言葉がありますが、学んだことを深く印象付ける意味でも、実際に食体験ができれば素晴らしいと思います。子どもたちと一緒にカレーを作るボランティア隊のような支援組織ができたらとの希望を持っています。

編集部 それはユニークですね。国際交流協会、教育現場、一般市民が協力した更に進んだ形かもしれないですね。教育の現場でより多くの人に利用されることを願っています。今日はありがとうございました。

(注1)アウトリーチ:学習文化施設に来られない人々のために、教育サービスを届ける活動
(注2)大学共同利用機関法人人間文化研究機構

■教材貸出について■
教材の利用をご希望の方は、
直接、(財)神奈川県国際交流協会
地球市民学習課へお問合せ下さい。
Tel:045-896-2899(月曜日休み)
Fax:045-896-2945
E-mail:gakusyu@k-i-a.or.jp
http://www.k-i-a.or.jp/currykit/

戻り