フェアトレードニュース JAPAN Today
「身近な国際協力 フェアトレード講座 実践編」

主催:名古屋地球市民セミナー実行委員会
協力:フェアトレード&エコショップ オゾン、フェアトレードショップ風”s(ふ〜ず)、フェアトレード&カフェ ぷぅーく



名古屋でフェアトレード実践講座

 2005年2月26日(土)、27日(日)の2日間、名古屋地球市民セミナー実行委員会(※)が主催し、「フェアトレード&エコショップ オゾン」「フェアトレードショップ 風"s」「フェアトレード&カフェ ぷぅーく」の3店が協力してセミナーが開かれました。ネパリ・バザーロのヒマラヤンワールドコーヒーの輸入に長年携わってきた丑久保完二が招かれ、各店舗で、現地の映像も交えながら、農民との関係作り、コーヒー栽培のもたらす効果、日本の消費者への思いを語りました。
 ネパリ・バザーロのコーヒーへの取り組みは、1994年に始まりました。一つ一つの村を訪ね、ネパールでは初めて有機証明を取り、誰とどのように活動を続けていくべきか、生産者の家庭状況や生産方法などの調査もして試行錯誤を続けてきました。ネパリが輸入したコーヒーは、ネパールで初めて海外に出荷された第1号でした。村に皮むき機を置いて中間搾取をなくす仕組みも作りました。コーヒー栽培は、遠い村の人々にとって貴重な現金収入の機会です。収入があれば子どもを学校に行かせることができ、持続的な生活が可能になります。ネパールの人々は、一方的な援助ではなく、仕事の機会を求めているのです。
 3回連続講座は、どの回にも多くの方の参加があり、会場は満席となりました。いつも店に来てくださるお客様、フェアトレードを勉強している学生、ネパリの商品を扱っているお店・・・。コーヒー農園というと、広大なプランテーションをイメージしていた人が多く、今にも崩れそうな山道を越えた村で、農家の裏庭の斜面に数本ずつ植えられたコーヒーをこつこつと集めるネパールのコーヒーに驚かれたようでした。
(※)1994年設立。年1回のペースで活動している。フェアトレードにも注目し、今回のセミナー開催となった。

ショップ座談会
 2店でのセミナーを終え、翌日に風"sのセミナーを控えた26日の夜、今回のセミナーについて、また今後の活動について、店の代表3名に丑久保がお話を聞きました。

[セミナー開催について]

丑久保:セミナーにお招きいただき、ありがとうございました。熱気あふれる会場でしたね。今回のセミナーはどのように企画が進んだのですか?

杉本(オゾン):今回のセミナーの発端は、2004年9月のネパリの展示会で丑久保さんからコーヒーの話を聞いたことです。急斜面の山間部の映像を見て、すごさが直に伝わりました。本当に山奥まで行って、より貧しい人のために役に立とうというネパリの方向性がわかりました。その迫力ある急斜面とコーヒーの村までの悪路をぜひお客様にも伝えたいと思いました。秋の展示会に行けなかった風"sの土井さんにも、展示会で感動した内容を伝え、名古屋地球市民セミナー実行委員会が主催でセミナーを開くことにしました。

丑久保:大勢の方が参加されましたが、広報はどのようにされたのですか?

杉本:ホームページや、メーリングリスト、メールマガジン。新聞にも載ったし、折り込みチラシも入れました。ネパリのコーヒーを飲んでくれている人には誘いやすかったです。若い人には、関心を持ってほしいし、声をかけやすいので、特に積極的に声をかけました。公共の場に置いたチラシを見て来てくれた人も多かったようです。地球市民セミナー実行委員会が主催したおかげで、国際交流協会の後援がもらえ、行政にもチラシを置いてもらえました。

土井(風"s):人に伝えたいと自分が思えるものならば、進んで人に宣伝できます。情報は想いを込めて手渡しするのが一番。申し込みを受けた時に友達も誘って来てくれるように頼みます。新聞に載っても、それで来てくれるのはほんのわずか。新聞を当てにして、がっかりすることもあります。

杉本:でも、新聞に載るくらいがんばっている、と見てもらえるのも利点ですね。

丑久保:今後はどうでしょう。セミナーを開くのは大変ですが、理解が深まったり、出会いがあったり、得るものも多いと思いますが。

清水(ぷぅーく):何回も開催するのは大変ですが、年1回くらいならば、仲間同士で励ましあえていいと思います。自分の店を自分のペースで切り盛りしていくのとは違います。けれど、逆に大々的にやったからこそできた部分もあります。

土井:3店舗の会場案内を入れたチラシを作ったので、お客様が自分の都合の良い日と会場を選べて、広がりがありました。

清水:今回のイベントは、人が集まるかと心配しましたが、椅子が足りなくて困るくらいでホッとしました。自主企画イベントは精神的にも大変なので、最近はお休みしていましたが、2人からのお誘いに乗って、やってみて良かったです。

杉本:通常、自分で企画してやるワークショップは多くても6人規模だったので、今回の30人規模は私にもハードルが高かったです。けれど、内容に自信があったので、それがやる気につながりました。

[イベントから生まれる共感]

丑久保:イベントを開催すれば、知ってもらうチャンスも増えて、お店を運営する原動力にもなりますね。

杉本:長く店を続けてきた土井さんは、これまでも「イベントを繰り返していくと、ネットワークが生まれてくる」と、その大切さを私達に教え、イベントでの合同出店に誘ってくれるなど、いろいろと配慮をしてくれていました。こうした3つの店のつながりが、このセミナーの話にもつながりました。

土井:イベントを開くことは、ネットワーク作りになります。イベントは、集客をあげるためにやるのではなく、自分が感動したことをもっと知りたい、それをひとりで聞くのはもったいないので、みんなにも聞いてほしいと思って企画します。一緒にやれてよかったという想いが共有でき、その結果、集客にもつながるのです。自分が感動した、心動かされたものは伝えたい。それは何についても言えます。

杉本:食品は「おいしかったね」と共感しやすく、生産者の様子を伝えるこうしたイベントは、衣類やクラフト以上に効果を得やすいと思います。今日来てくれた大学生も、学園祭でフェアトレード商品を扱いたいと言っていました。短時間にかわす情報交換でも、広がりのきっかけになります。自分が着心地がいいと思った服を人にも勧めたくなるのと同じように、感動した話はお客様と共有したくなります。お客様が「よかった」と褒めてくれると本当に嬉しくなります。それは、ただ商品が売れてよかったということではなく、生活観を共有できた喜びです。

[ネパリ・バザーロの展示会]

丑久保:ネパリの展示会が今回のセミナーのきっかけになったということでしたが、お店の方にとって展示会はどのような意義があるのでしょう。

杉本:フェアトレードの店を始めて4年目になります。経営は厳しいですが、店を続けていることは自分の力になっています。現地をよく知るネパリなどから話を聞くことが、自分の世界を広げています。収入が低くてもシンプルライフでがんばろうと思います。

土井:小売店は現地には簡単に行けないので、現地に行っている人の話や、現地の人の話を直接聞くことが、絶対に力になっています。報告書を読むだけでは得られないことを、その場、その時間、その空気を共有することで得られます。展示会にはぜひ行かれるといいと思います。

杉本:展示会に行って、品物を見て、これはいいと思うものを仕入れるのが一番だと土井さんに言われ、それを正直に実行してネパリの展示会に行って品物を見たら、それぞれの商品にまつわる話がすごいと思いました。生産者の話にも感動しました。店に戻る時の気持ちが違います。フェアトレードのメッセージは自分の力になります。説明責任とか言われなくても、お客様に話したくなるのです。
 展示会に行くと、ネパリはスタッフがどんどん成長し、新人もがんばっているし、一丸となっているのが伝わり、エネルギーをもらえます。

丑久保:肉声を聞く、交流を図る重要さですね。

土井:展示会には、店を閉めてでも行く価値があると思いますよ。

[国際理解教育への関わり
]
丑久保:学生の応援が、店の力や次のステップになると思います。さらにフェアトレードには国際理解教育としてのニーズもあります。お店ではそうした横のつながりがありますか。

土井:中学生以上が対象の企画はこれまでもありましたが、総合学習のおかげで、小学校にも呼ばれるようになりました。小学生だと、どういう言葉で伝えるか難しいのですが、伝えることができるチャンスに恵まれていることは嬉しく思っています。それも大切な地域とのつながりですね。彼らの生き方にフェアトレードの種をまくことができるのです。

杉本:去年12月まで商店街の中に店があったので、中学生が職場体験に訪れました。商店街はそうした受け皿になっています。総合学習で子どもたちが、店の商品がどこから来たのか調べに来たりもします。そうした見学や中学校の職場体験にはフェアトレード店も協力できるので、今後も積極的に受けたいと思います。

土井:元気になる発信をしないと。

杉本:今回の経験を生かして、5月の世界フェアトレード・デイで学生には積極的に声をかけたいですね。

土井:伝えたいことをうまく伝えるのは難しいけれど、こうしたイベントに来てもらって伝えられるのは素晴しいこと。知ってくれている人をきちんと作っていけます。

[店同士のネットワーク]

丑久保:今回のセミナーの企画を通して得たものも多かったのではないでしょうか。

清水:他のお店と一緒にやることで元気をもらえます。ひとりで店を切り盛りしているとなおさらです。

杉本:プレッシャーも喜びに変換されますね。

清水:それは実感しました。愚痴を聞いてもらいながら、結局発破をかけられました。

杉本:正月に3人で集まって、いろいろしゃべりましたね。

清水:私は店の運営で落ち込んでいて、叱られたり、けしかけられたり。

杉本:ぷぅーくは、すばらしいロケーションで、日差しも緑もある素敵なお店を作っているのに、もっと自信を持って、積極的にやればいいのにと言ったのです。

清水:お客様の来ない午前中はお店を閉めて、仕事に出て、午後から開けて店を維持しようかと言ったら、それじゃあ店がかわいそう、洋服がかわいそうと言われました。

杉本:まだまだ改善できる余地があると思ったから。

清水:いろいろ言われて、あとで噛みしめて、がんばってやってみようと思えました。具体的アドバイスももらいました。表へのアピールがそれまで控えめだったのは、自信のなさだったと思います。今の店で勝負できると言われ、やる気が出ました。前向きにやり始めて、アピールすると、外を通る人が店に目をやり、確実に反応が違うのがわかりました。常連のお客様にも誉めてもらえました。自分がその気になってやり始めるとプラスの動きができてくるのを実感しました。変化があれば、周りにも波及していきます。自分が元気でないと、受け身の商売は萎えていき、悪いほうに動き始めます。自分が元気になって模様替えをし、アピールし始めた時の変化は不思議なほど。2人には感謝しています。

丑久保:各地にこういう小さなグループができ、それがまたつながっていくと良いですね。

杉本:個性の違いが面白い。教えてもらうことも多い。企画を通じて、それぞれの個性が浮かび上がってくるのを感じました。

土井:ただ店にいて販売しているだけではできないことが、自ら外へ向かって動くことで可能になります。いろいろな人とつながることが大事ですね。


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