ネパール訪問記「はじめてのネパールでの出来事」  ネパリ・バザーロ パートスタッフ 一条浩美

(写真一番左が一条)

私は2005年9月、ネパールに初めて行きました。話を聞いたり、映像は見た事がありましたが、実際に行ってみて、たくさんの生産者の皆さんにお会いすることができ、大興奮の日々でした。
私の主な仕事は、ネパールから届いた商品の検品やお直しなので、どんな生産者が作っているのかと長い間想像を膨らませていました。

ミランガーメントへ一日検品に行きました
 春代さん、百合香さん、勝俣さんといつも一緒にいて、安心しきっていたところに、ミラン代表のシャラダさんからのお誘いで、一人でミランへ行くことになりました。行くまでは、ネパール語もほとんど話せないのでどうなることかと、とても心配でした。でも、ネパリ・バザーロの商品がたくさん出来上がっていて、最後の仕上げアイロンや検品の状態でしたので、出荷前のネパリグッズに囲まれてとても嬉しかったです。はじめに「襟遊びブラウス」のサイズのチェックをしました。身幅が大きく出来ているのを、シャラダさんの信頼が厚いクリシュナさんが自ら除けていました。そして、カッティング担当者に説明していました。私が計測したのは、正しく仕上がっていました。その場にいた仕上げの担当者とクリシュナさんは、安心したようでした。その後も一枚一枚緊張しながら3人で計測しました。ネパールでも日本でも良い物を作りたい気持ちは一緒でした。
次に「くつろぎフェルトスリッパ」の検品をしました。事務所でも何度かお直しボックス(出荷のときに検品ではじかれて、お直しが必要な商品を入れる箱)に入っていた、形が歪なものや大きさが左右で違うものなどがありました。一緒に検品をしていたシャラダさんとジョティさんは私が除けて置いた山を見て心配そうに、何処が駄目なのか聞いていました。すると、担当の責任者を呼んで目の前で直してくれました。せっかく付けた物を外して付け直すのは時間も余計にかかるし、気分も良くないと思います。ほんの少しの事を気に留めればお直しも無くなっていくと思います。ひとりひとりの生産者まで伝わるように、これからもお直しが必要なことを伝えていければいいなと思います。

あこがれのシディマンさんに会えました
 ネパールで会える事を一番楽しみにしていたのは、スタンプ職人のシディマンさんでした。初めて木彫りのスタンプを見た時から、とても気に入っていました。ネパールに行ってきたスタッフから話を聞いたり、スタンプが入荷すると、とてもワクワクしていました。
何年か前に個人的にスタンプを注文したことを、シディマンさんは覚えていてくれました。初めて会ったのに、前から一緒にスタンプを押していたような不思議な気持ちになりました。お揃いのスタンプのTシャツをプレゼントして一緒に写真も撮って、幸せのひとときでした。話には聞いていたスタンプを彫る窓辺の机と、傘の骨で出来ている道具も使い込まれていました。今は、シディマンさんしか彫ることができない、世界にひとつしかない物がたくさん作り出されている小部屋は穏やかな空気でいっぱいでした。これからも、仕事が途切れないように、木彫りのスタンプが受け継がれていけるように、私もスタンプを愛用していきます。
 今回のネパール滞在は、たくさんの商品が完成する過程を、少しだけでしたが見る事ができました。お直しをしていて、疑問に思っていたことも少し解決して、今後に活かせると思います。この2週間で、今までよりもさらにネパールを近くに感じるようになりました。

縁の下の力持ち 

 生産者から届いた商品をひとつでも多くお客様にお届けするため、一条さんはどんな細かな作業も厭わず、いつも黙々と仕事をしています。丁寧で商品への気配りが行き届いた仕事ですが、その手元は実にテキパキと素早く動きます。でも、最初の頃はひとつの商品を直し終えるのに多くの時間を費やしていました。「そんなに時間をかけていたらすごく高い商品になってしまうのよ」と私が言うと、真剣な眼差しで聞いていた一条さんは突然顔を輝かせ「ああ。分かりました。いつか私の仕事がなくなればいいのですね」と嬉しそうに言いました。「そうね。あなたの仕事がなくなる程、質が上がればいいわね」と二人でその日を目指しました。ところがあれから4年が過ぎた今も彼女は大忙しです。商品の質は比較にならないくらい向上しましたが、輸入量が格段に増えたからです。
 直しながら「この問題はどうして起こるのだろう」「このミスは時々あるけれど、同じ人の癖のようだ」と、作る人の考え方や癖を想像し、会いたい、現場を見たいと思っていた彼女はとうとうネパールまで出かけてしまいました。生産者の不足を補い、その成長を支えてきた彼女はネパールでとても感謝され、大事にされました。帰国後、さらに意欲を燃やす一条さんは、正に“縁の下の力持ち”です。この仕事が大好きという彼女は、今日も静かに針を動かし続けます。     
               文・土屋春代

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