フェアトレードニュース フェアトレードをめぐる学生の動き
大学生協への取り組み

最近、学校の授業やゼミなど、様々なきっかけからフェアトレードに関心を持つ学生が増えています。現在世界には戦争、貧困、環境破壊などの深刻な問題が存在しますが、それを解決する方法としてフェアトレードを知った全国各地の学生達が、「フェアトレードを広めたい、知ってもらいたい」という想いで、学祭で委託販売を行ったり、移動式カフェをしたり、それぞれの方法でフェアトレードを伝えようとしています。
2005年の大きな動きの一つに、大学生協へのフェアトレード商品導入がありました。学生生活に必要なものが揃う大学生協でフェアトレード商品を広めていくことは、学生がフェアトレードの存在を知るための大切なきっかけになるのです。熱い想いを持った学生達が大学生協に積極的に働きかけた結果、その取り組みや想いが通じて、導入が実現しました。導入にあたっては、学生、大学生協の方、ネパリ・バザーロスタッフの三者でミーティングをする機会を持つなど、「コミュニケーション」も大切にしてきました。
 今回、学生の皆さんがどんな想いを持って活動をしているのか、それぞれの想いを知りたくて、積極的に活動を続けている学生の皆さんにお話を伺ってみました。

東京都世田谷区にある東京農業大学で活動する「7インチ(セブンインチ)」の皆さんは、2005年6月に大学生協での商品導入を実現しました。「7インチ」の発起人である大学2年生の勝俣あやさんは、高校生の時に神奈川県立神奈川総合高校のワンコインコンサートの中心メンバーで、その頃からネパリ・バザーロの活動にも関わっています。秋の収穫祭でフェアトレードのことを紹介しようと企画し、それまでに学内でフェアトレードを知ってもらう機会を創りたいという想いから、大学生協への導入を考えました。生協店長の大塚さんとコミュニケーションを重ねながら、ゆっくりと着実にフェアトレードを広めようとしています。今の想いを「7インチ」を代表して、勝俣あやさんに伺いました。

世界を変えるのは私達の一歩から「7インチ」 (東京農業大学) 


Q「7インチ」とはどんな意味があるのですか?

 7インチとは、農大生にフェアトレードを提案するために結成した、小さなグループです。「私達が活動することで、世界が一歩(7インチ)前進しますように」という、ささやかな願いが込められています。
Qフェアトレード商品を大学生協に導入したいと思ったきっかけは何ですか?
 私が大学に入学した時、身近にフェアトレードを知っている人は一人もいませんでした。エコキャンパスを意識する農大だからこそ、フェアトレードの考え方が受け入れられるという確信がありましたし、「まずは足元を変えていかなければ」という想いがありました。その具体的なアクションとして、大学生協でのフェアトレード商品導入を考えました。実際に、現在農大内では「フェアトレードという言葉を知っている」という人だけでなく、「商品を購入したことがある」という人も、かなり増えてきていると思います。
Q導入の際に特に力を入れたこと、苦労したことはありますか?
 少ないメンバーで、研究室やサークルにサンプルやカタログ、オリジナルのリーフレットなどを持って挨拶に回ったり、「フェアトレード商品販売開始のお知らせメール」を一人で友達に100件以上送ったり、地道な学内営業をしました。大変でしたがその努力が実って、売れ行きや周囲の方々の反応等でしっかり成果が見えてきたので、 苦労したというよりも、こんなに上手くいったことへの驚きの方が大きかったですね。
Q大学生協の導入を通じて何か感じたことはありますか?生協の皆さんの反応などはいかがですか?
 農大の場合、大塚店長に最初お話に伺ったときから、かなり理解は示してもらえたのですが、それでも最初の頃はまだ、聞いたこともない「フェアトレード商品」というものに販売予測が出来ず、店長も少し慎重に判断していたように思います。そのため、当初夏休み中の販売は休止し、その後再開して秋の収穫祭までで終了という予定でしたが、導入後一週間弱で最初に発注したクッキーが完売し、その後も売り上げが良好だったので、夏休み中も実施することになりました。また、収穫祭が終了しましたが、これからコーヒー、紅茶のシーズンということで、期間延長という嬉しいお知らせも頂くことができました。理念を理解してもらって、一度商品を置くことができても、それで「あぁ、よかった!」ではなく、その後も商品が動くようにしっかりPRを続けるなどのフォローがとても重要なのだと感じました。販売数も増えて、さらにネパールからいらしたカンチャンジャンガ紅茶農園のディリーさん、コーヒー村グルミのパルシュラムさん、ネパリ・バザーロ副代表の丑久保完二さんが実際に生協の店舗までいらしてくださったことで、店長やスタッフの皆さんと私達の気持ちがさらにつながったと思います。その後、店長との連絡も頻度を増し、新しいディスプレイやフェアトレード関連書籍の導入など、提案も頂くようになり、私達学生だけでなく、生協も一丸となってフェアトレードを盛り上げてくれていると感じています。
Qフェアトレードへの想い、これからの展望を教えてください。
 2005年11月半ばから、スパゲッティーやカレーを出している学内のレストラン「アミ」で、フェアトレード・コーヒーがメニューに登場することが決定しました。また、学食でのフェアトレード・カレーフェアも、すでに提案しており、現在食堂部で検討して頂いています。生協で利用度の高い食品といえば、そのまま封を開ければ食べられるものなので、取り扱っているフェアトレード商品の中でもとりわけ、クッキーが人気です。もし学食でフェアトレード・カレーや、フェアトレード・コーヒーの味を知って頂ければ、生協販売とも相乗効果を狙うことができると思います。これらの活動が安定し、実績を示すことができるようになれば、将来的には大学側にも、エコキャンパス作りの一環として、ISOなどの取り組みと共に、フェアトレードの活動を全面に押し出して頂けるよう提案していけたらな、と思っています。

美味しく、楽しくきっかけ作り「ねぱりーず」 (桜美林大学) 


私達の団体を思わせるかのような、「ねぱりーず」というグループ名と、「Nepali's Coffee」と書かれた丸いロゴ。「ねぱりーず」は、東京都町田市にある桜美林大学で活動をしています。学祭や大学内でフェアトレードカフェを開催し、手作りのオリジナルTシャツを着て、カップにロゴマークのシールを貼り、ネパリ・バザーロのコーヒーを入れて販売しています。
「ねぱりーず」を2004年に発足させた4年生の中川由香さんは、「周りにボランティア活動や留学で海外に行く学生が多い割りに、その時得た経験や想いを形にする場が少ないと感じていました。そこで、学内でその想いを形にする場としてフェアトレードのカフェを開きたいと思うようになり、皆に呼びかけ、人を集めていたらいつの間にかグループになっていました。授業で学んで終わりにするのではなく、実行することが大事だということ、そして一杯のコーヒーを飲むことで、こんなに身近に国際協力ができるということを感じて欲しいと思っています」と語ります。また、ネパリ・バザーロのイベントなどにもボランティアとして参加する中で考え方に共感し、もっと応援したいという気持ちから「ねぱりーず」という名前にしたそうです。
そして現在は、その想いを代表の天野美葉さん(3年生)がしっかりと引き継ぎ、さらに新しいつながりも作り出しています。2005年秋の学祭のテーマは、「共感できるストーリー」。「美味しい、楽しい、気持ちいい」など心と体で感じて商品を買って欲しいと思っているので、コーヒーやマサラティーも気軽に飲んでもらえるようにカップに入れて販売したり、ヘンプ編みワークショップも同時に開催したりしました。
PRを担当している浅沼恵理子さん(3年生)は、「ねぱりーずの活動が楽しくて仕方ない!」と笑顔で話してくれました。フェアトレードって、私達にとっても「楽しい」もの。そんな想いを、自分達のフィールドで行動に移している「ねぱりーず」の皆さん。2005年12月からは桜美林大学の生協で試験的に販売が始まりました。一杯のネパールコーヒーから、美味しく楽しく、想いを発信し続けてくれることを期待しています。

 なんとかしよう!なんとかなるさ!「なんとか」 (明治学院大学)  


神奈川県横浜市にある明治学院大学戸塚キャンパスの生協では、2005年9月からフェアトレード商品を導入しました。ネパリ・バザーロの紅茶クッキー、コーヒー、紅茶などを置いています。導入しようと懸命に働きかけたのは、国際学部4年生の近藤もえさん、飛山歩さん、伊東裕彰さんの3人。それぞれが授業で知った、現在の世界で起こっている貧困問題や環境問題、ゼミで感じた様々な想いや体験。それらをフェアトレードを通じて自分達なりに広く伝えていきたいという想いから、アクションを起こしました。「なんとか」という団体名は、3人で話していた時の口癖だった「なんとかしなくちゃ、なんとかなるさ、なんとかしていこう」という言葉からつけたそうです。導入にあたっては生協の専務理事である栗原さん、店長の岡山さんと何度もミーティングを重ね、学内で試食会を行い学生からのアンケートをとるなど、地道な努力の結果、導入が決まりました。行動を起こすにしても色々な方法がある中で、3人がなぜ生協へ導入をしようと考えたのか、尋ねてみました。
 「国際学部では、授業の中で世界の様々な問題を知る機会があり、フェアトレードを知るきっかけもあります。でも他学部の学生が知る機会はほとんどありません。私達はフェアトレードをもっと多くの人に知ってもらいたいと考え、他学部の学生も集まり身近な場所である大学生協にフェアトレード商品を導入することができたら、より多くの学生に知ってもらえるのではないかと思い、今回の導入を考えました」とその熱い想いを語ってくれました。卒業しても、学生時代の体験や想いを持ち続け、より平和な社会を目指して、フェアトレードはもちろん、それ以外の方法でも、とにかく自分なりに何らかのアクションを起こしていきたいそうです。今後も3人が学内で蒔いた種が、世界で起こっている問題、フェアトレードを知らない人へも熱いメッセージとなって伝わり、キャンパスに根付いていくことを期待しています。
 
明治学院大学での生協導入は、生協の方々の協力なしには実現できませんでした。どんな想いで学生達の声を聴いていたのか、「なんとか」の皆さんが生協の専務理事、栗原義行さんにインタビューした模様をお伝えします。
Q なぜ学生の申し入れにこんなにも協力的に対応してくださっているのですか?
 大学生協はコンビニとは違って、学生や職員の出資金で成り立っています。だからこそ、生協としては学生の皆さんの声をもっともっと聴きたいのです。自分で何かを見つけてくる学生を大事にしたいし、そのために実行したいと考える学生達の声に応えたいのです。想いがあっても手段がないならば、私達はいつでも相談に乗ります!

Q 今までに学生からの呼びかけで生協が動いた興味深い話があれば教えてください。 
2001年に販売しているお弁当などの容器が、使い捨て食器からリサイクル容器に替わりました。食堂のお皿なども使い捨てではなくなりました。これは学生から「使い捨て」を問われ、エコキャンパスミーティングと生協が協力して、切り替えに取り組んだ例です。学生の声で大学は変わっていくということを皆さんに伝えたいです。

Q 今後の大学生協に期待すること、展望などを教えてください。
 生協が単なる店ではなく、「人と人がつながる場所」となってほしいです。今は学生の参加をいかに促すかが私達の課題です。しっかりと聴く耳を持ち、学生の想いをきっかけにお店作りをしていきたいと思っています。

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