フェアトレードニュース SCHOOL TODAY
フェアトレードをめぐる学生の動き 「今、私達にできること」
悩み、迷い、時にはぶつかり合いながらも自分達の方法を模索し、「学校」という場所から「社会」を変えようと頑張っている学生達がいます。一人ひとりが自分の立場や個性を活かし、それぞれの視点から発するメッセージは、確実に社会を変える原動力になっています。私達と想いを共に、明るい未来を創っていく仲間達をご紹介します。



横浜大口台小学校6年1組 「Happy Angel」  

卒業を目前に控えた2006年2月11、12日。横浜市立大口台小学校6年1組のみんなは、地元商店街のコミュニティーセンターを借り、フェアトレードショップ「Happy Angel」を開店しました。3度目の今回は、小学校生活最後の締めくくりです。この1年間で学んだことを、気持ちを込めて、精一杯自分の言葉でお客様に伝えました。
 1年前のバレンタインデイ。担任の谷口英幸先生から、フェアトレード・チョコレートの話を聞き、初めて「フェアトレード」という活動を知りました。興味を持ったみんなは、自分たちで出店したり、地元の商店街のお店に商品を扱ってもらえるようにお願いして回ったり、ネパリ・バザーロのスタッフから生産者の話を聞いたり、いろいろな活動を始めました。そんな中、大人にうまく説明できなくて悔しい思いをしたり、「貧しい」という言葉を気軽に使ってしまったことを指摘されて悩んだり、時には問題に直面しながらも、その度毎にみんなで話し合いながら活動を進めてきました。そしてその真剣な想いが、ついにネパールの生産者と出会う機会を創りました。
 2006年2月6日。ネパリ・バザーロは、セミナーのため日本に招待したヤングワオ代表のウシャさんと、紙布の糸紡ぎ担当のマンマヤさんと一緒に大口台小学校を訪れました。初めて向き合う生産者に、みんな疑問をぶつけます。「どんな気持ちで作っているのですか?」「フェアトレードの仕事をして、良かったことは何ですか?」自分の言葉で人に伝えられるようにと真剣です。
 最後に、クラスの一人ひとりがウシャさんとマンマヤさんに手作りのプレゼントを渡してくれました。その中の千羽鶴を見てウシャさんは、「ネパールでは、この鳥は平和の象徴です。今ネパールは内戦状態ですが、こんなにもたくさんの平和をネパールに望んでくれてとてもうれしいです」と涙を浮かべながら感謝の気持ちを伝えました。きっとみんなも始めは、今世界で起こっていることは自分の生活とは関係のない、遠い世界の話だと思っていたことが、フェアトレードの活動をし、生産者と接することによって、少しずつ人の痛みを自分のことのように感じるようになったことでしょう。触れあい、対話し、感じたことは、彼らの心の中にしっかりと刻まれたことと思います。きらきら輝く目をした子どもたちの一人ひとりの想いが合わさり、大きな力となって地域から変わろうとしています。


神奈川県立神奈川総合高校 「ワンコインコンサート」

 2006年2月5日、地球市民かながわプラザで、県立神奈川総合高校の生徒有志39名による第7回ワンコインコンサートが開催されました。このチャリティーコンサートの収益金は、ネパールのカンチャンジャンガ紅茶農園で働く人の子どもたちへの学費支援に使われています。「顔の見える支援」をキーワードに、5年前からネパリ・バザーロと協力して奨学金の仕組み作りから行い、現在は170人の子どもたちに奨学金を出しています。新たに加わった、ネパールのことなどほとんど知らなかった学生達も、ネパリ・バザーロの事務所に何度も足を運び、ネパールの子どもたちの現状を知り、自分達にできることを話し合いながら当日を迎えました。そして、その想いを歌やダンス、劇を通して伝えました。中でも、世界の不平等な貿易の様子を表した劇の中では、「人々が苦しむ不平等な世界の原因は、無関心な私達にあります。無関心であることは、最大の罪です。全ての現実から目を背けず、現実を知り、身近なことに目を向けましょう。そして、そのことを友達と語り合いましょう。世界は確実に変わります」と力強いメッセージを訴えました。
 またネパリ・バザーロは、奨学金を受けている子どもたちの様子を映像を交えて伝え、紅茶農園カトマンズ事務所長ディリー・バスコタさんからのメッセージを読み上げました。「私達の家族であるワンコインコンサートの皆さんが、小さな可能性の光を信じ続け、努力されてきたことに本当に感謝します。皆さんは、思いやりの心を持って人と接する、豊かな社会を創り上げようとしています。あなた方は、いつも私達の心の中にいます」そして、なかむらまきこさん(フェアトレードを応援しているシンガーソングライター)に「All Smile」を歌って頂きました。
 顔の見える継続的な支援を通して、ワンコインコンサートの皆さんが得たものは、きっとかけがえのない大切なものだったことと思います。一人ひとりの心の中の小さな光が、より一層輝きを増し、日本とネパールの子どもたちの笑顔の架け橋となっています。さらに、現地の大人のやる気を引き出し、地域全体が自立の道を歩み始めています。


沖縄キリスト教学院大学 NPO 「ONE LOVE」

 沖縄で、活発にフェアトレードの活動をしている学生達がいます。「ONE LOVE」は、沖縄キリスト教学院大学の学生が立ち上げたNPOです。授業で世界の不平等な実態を学び、一人ひとりの心の中に、何かをしたいという想いが募っていた頃、新垣誠先生の「平和学」の授業でフェアトレードを知りました。その瞬間、「これだ!私にできる!みんなができる!買い物だ!」と多くの学生が直感的に感じ、活動を始めたそうです。
 2005年10月には、大型スーパーでフェアトレード商品の販売もしました。また11月の学祭では、フェアトレードのスパイスを入れたサーターアンダーギーや、カレースープを作って販売したり、ネパールのロクタ紙で作ったランプシェードを飾ったり、様々な工夫をしながらフェアトレード商品を販売し、お客様にメッセージを伝えました。そして、2006年5月のフェアトレード月間には、地元のフェアトレードショップ「風の里」と協力して、料理や貿易ゲームや紙芝居を通して、地元の人にフェアトレードを伝えようと企画しているそうです。
 メンバーの一人である親泊朝美さんは、「ゴールはどこにあるのか分からないし、何がゴールなのかも分からないけれど走り始めています。悩んだ時や意見が分かれた時は原点に戻り、話し合い、進んでいきます」と語り、模索しながらも一歩一歩前進しています。また、同じくメンバーの大城亜希子さんは、「私はもう現実に世界で起こっていることを知り始めました。自分の中にある愛を信じて突き進もうと思います」と、心に秘めた熱いメッセージを送ってくれました。そんな彼らの活動の支えである新垣先生は、「私達は、軍事基地に取り囲まれ、その他にも様々な問題を抱えている沖縄に生きています。無関心、非人間的な生き方、暴力など、精神の貧困は先進国側の私達の身の回りに溢れています。問題解決のための抵抗も大切ですが、私達自身が変わらないといけません。人間が人間らしく生きること。夢を持ち、希望を持って生きること。手を取り合い、助け合って生きること。その生き方が、フェアトレードの活動の中に見えます。何が大切なのか、簡単な答えはありませんが、これからもずっと、学生と一緒に悩み続けていきます」と想いを語ってくれました。
 形にとらわれることなく、常に原点をみつめながら活動をしている「ONE LOVE」の皆さん。彼らが沖縄という地から発するメッセージは、私達一人ひとりの生き方を問うているようです。

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