特集 紙布SHIFU
紙を細く切り、撚りをかけた糸を織って布にしたもの。昔日本では、極貧に苦しんだ農民たちが貰い受けた反古紙から布を織り、野良着に仕立て、寒さから身を守っていた。
  
緊張と期待と不安、様々な感情が交錯する中、2006年2月、紙布の発表にこぎつけました。そして、思いがけずたくさんの温かいご声援をいただき本当にありがたく感謝申し上げます。どれほど勇気付けられたか計り知れません。単に物を売り買いするだけではなく、どういう社会を目指すのか、その実践と云うフェアトレードの本質が言葉だけではなく事実として伝わり、共感を生み、これからも前に進めるように背中を押してくださったのだと思います。
 数百年の昔、日本で生まれた紙布という知恵が、ネパールで育とうとしています。木綿や麻や絹のように世界に広がるかどうか、これから紙布の本当の力が試されます。どれほど時間がかかっても人々の生活に根付いて欲しいと望んでいます。そして、ロクタの他にこれといった素材のない遠隔の地の人々の貴重な収入になり生活の改善につながって欲しいと願います。
 ネパールでも「SHIFU」と呼ぼうとウシャさんと決めました。日本の紙布とネパールのSHIFU。ふたつの国の市民の協力で生まれた布。世界中どこでも誰でも安心して暮らせる平和な社会を願い、共に生きるために支え合う人々の想いを紡ぎ続けていってほしいと思います。    

感謝を込めて ネパリ・バザーロ代表 土屋春代



ネパールの純度の高いロクタ紙の販路を広げ、人々の仕事の機会を創るため、ロクタ紙から紙布を織り、服を仕立てようとネパリ・バザーロが始めたプロジェクト。2001年に構想を思い立ち、2003年春に本格的にネパールでのプロジェクトをスタートした。日本の染織作家の協力を得て、当時WEANコープの事務局長だったウシャさんをパートナーに選ぶ。そして多くの課題を乗り越え、2006年春、ついに紙布の服が完成した。


細く、強く撚りのかかった紙糸が織り成す、天然のしわ加工のような紙布特有の風合いは、手間を惜しまぬネパールの人の手と自然が生み出した、他にはない味わい深さです。着れば着るほど柔らかく、体になじんできます。その上、紙糸は様々な方向を向きながら絡まり合ったロクタの繊維から成っているので、細い糸の中には空気がたくさん含まれています。その空気が、紙布と肌の間にほどよい温度の層を作り、私達の身体を暑さや寒さから守ってくれます。暑い夏は涼しく、寒い冬は暖かく、温度を調節してくれます。ふわりと軽いので、肩もこりません。
 色は、グレイッシュピンク、グレイッシュミント、チャコールグレーの3色。どれも縫製を担当するサルミラさんが少量ずつ、自ら草木染めを行っています。草木染めは熱いお湯で一定時間煮て染めなければならないので、当初私達は、デリケートな紙布は草木染めに耐えられるか心配でした。しかし、ヒマラヤの大自然の恵みを享受した、天然染料の持つ力とロクタの繊維は、想像以上に強く、短時間の煮沸でこんなにも鮮やかで美しい色を与えてくれました。まさに、ネパールだからこそ実現できた、紙布の草木染めです。優れた特性を持ち、たくさんの人の想いが織り込まれた紙布。ぜひ一度、羽織ってみてください。

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