変化織り


 服作りは、ネパールの素材を使って、ネパールで織った布でと決めていました。その想いを込めて、とうとうテキスタイルデザインから手掛けることにしました。

 服作りを始めて試行錯誤していた頃、手織りの良さを活かした布がほしい私たちと、手織りで機械織りのようなものを織ろうとしていたネパールの生産者の間に大きな感覚の違いがあることに気づき、お互いに驚きました。
 また、ネパールで織られている布はほとんどが平織りなので、もっと風合いの違う布を織ってほしいと思っていました。それには、たて糸とよこ糸が複雑に交差する変化織りを覚えてもらうことが必要でした。その頃、染織作家の大塚瑠美さんと出会い、2004年3月、ネパールでの変化織りの指導が実現し、美しいレース織りが生まれました。そして、染織作家の中畑朋子さんと出会い、2005年末、政情不安にもかかわらずネパールで変化織りの第2回目の指導をしていただきました。 
 今回は、コットンクラフト、マヌシ、マハグティの3つの生産者団体で、それぞれの状況や特長に合わせた変化織りを教えていただきました。指導は、平織り用の機を変化織りができる機に作りかえるところから始まりました。今まで平織りしか織ったことのなかったマヌシやマハグティの生産者は、どのような機にすればいいのか想像もつきません。どうやって伝えようか悩んでいた時、以前に大塚さんが作りかえた機がコットンクラフトにあることを思い出しました。早速生産者を連れて行って説明すると、すぐに理解し、何とかできあがりました。「織りは先人の知恵であり、人類の財産。それを次の人に伝える義務があります」という大塚さんの言葉通り、多くの人に支えられたこれまでの積み重ねが、ついにネパールで形となり、この新しい布が織りあがりました。

中畑朋子
染織作家、養護学校講師、岐阜県高山市在住。アジア旅行で接した民族衣装に興味を持ち、染織を学ぶ。2004年、JICAからの派遣で約1年間、ネパールにて染織製品開発指導にあたる。2005年末、ネパリ・バザーロの要請で、ネパールで変化織りの指導を行う。

「今回の技術指導では、自分の技術が必要とされていることを強く感じました。ネパールの生産者には、今回身につけた『変化織り』の技術に自信を持ち、日本で好んで着てくださっている方々がいることに、喜びを感じてもらえたらと思います」

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