アジア女性フォーラム2006年ソウル
フェアトレードでつながる 韓国と日本の女性たち
文・丑久保完二



韓国の首都ソウルで、2006年11月1日、アジア女性フォーラムが開かれました。テーマは、「アジアのフェアトレード」で、フェアトレードの経験を共有し、アジアの生産者と消費者を結んで、継続可能な仕事創りと生態系の保護、女性のエンパワメントに寄与するために開かれました。主催は「女性連帯(Korean Women's Environment Network)」で、その共同代表は、4人。その一人、パク・ヤンスクさんは、金大中元大統領と共に韓国の民主化のために闘った女性で、フォーラムが開かれた時は74歳。子育てをしながら活動を続け、60歳の時に、次世代が育ってきたからとリタイアを決意し、イギリスの大学へ留学。この留学中に、緒方貞子さん(注)が70歳を過ぎても国際社会に貢献していることを知り、それより若いパクさんは活動へのカムバックをしました。今でも、パクさんが学んだ韓国の大学を卒業した103歳になる元気な先輩から「体が動く間は仕事をし、人の役に立ちなさい」と、はっぱをかけられているそうです。そのパクさんが、フェアトレードを始めるきっかけを語ってくれました。「韓国は、長い間、民主化を実現するために政治にからむ活動にその多くを費やしてきました。その分、フェアトレードの取り組みが遅れたと感じています。時代は変わり、韓国も世界の問題に取り組む必要があります。そのため、日本のフェアトレード経験を私たちも共有したい。ネパリ・バザーロの協力を願っています」
 このアジア女性フォーラムは、二部構成で、第一部は、シンポジウム。まず、ネパリ・バザーロ制作の「紙布」のDVDが韓国語字幕で上映されました。そして、ベトナム、インドの生産者のお話、メインゲスト・スピーカーとしてネパリ・バザーロ代表の土屋春代が話をしました。コーディネーターは、韓国の弁護士、パク・ワンスンさんが始めた「収入の1%を困った人々に使おう」運動で莫大な財源を集めて出来た有名なNGO、ビューティフル・ファウンデーション専務理事のユー・ジュンソクさんでした。
土屋春代の話には、会場が熱気に包まれました。なぜフェアトレードを始めたのか、始めてどうだったのか、話が続きます。フェアトレードをこれから始めようとする韓国の人々は真剣に聞き入りました。「とても辛い時があった。進むのも地獄、戻ることもできない。いっそ飛行機が落ちれば良いと思った」のクライマックスでは、皆の目が土屋春代と通訳のやりとりに釘付け。通訳についてくれたボランティアのパク・チョンイムさんは、事前に調べを充分に行い、土屋春代の意思を100%伝えたいと研鑽されていたこともあり、このフォーラム終了後の懇親会で、女性連帯の代表、パク・ヤンスクさんから「あなたの通訳はとても素晴らしかったわよ」とのコメントをもらい、夢のような人から褒められ、とても感激されていました。そうです。パク・ヤンスクさんは、自立したいと願っている女性の目標、あこがれの人なのです。
(注)1927年生まれ、国際政治学者。1976年国連日本政府代表部公使、1991年から2000年まで国連難民高等弁務官、
2001年アフガニスタン支援政府特別代表、2003年国連有識者ハイレベル委員会を経て現独立行政法人国際協力機構理事長。



 写真左端が通訳のパク・チョンイムさん。



写真左端から、パク・ヤンスクさんと土屋春代。


 第二部は、ファッションショー。ネパリ・バザーロの服を着た男女30名を超えるモデルが次々と登場して来ます。会場はパッと明るくなり、初めは女性連帯の代表、ビューティフル・ファウンデーション代表、政府環境局長官・・・とそうそうたる有名人が現れ、若い人、国際結婚カップルとモデルが変わっても全てがネパリ・バザーロの服。素敵だなとボーっと見惚れていると、韓国とフェアトレードの橋渡しをしたいと有名歌手も挨拶されました。
 このファッションショーは、2006年6月に元大統領府の庭でも開かれ、それに続いて行われたものですが、その度毎に、フェアトレードの輪が広がっていきます。多くの参加者に、貧困の改善、女性の地位向上の可能性を感じさせたこのフォーラム。アジアから韓国と日本が協働し、世界に向けて発信していく日も近いことでしょう。
(注)1927年生まれ、国際政治学者。1976年国連日本政府代表部公使、1991年から2000年まで国連難民高等弁務官、
2001年アフガニスタン支援政府特別代表、2003年国連有識者ハイレベル委員会を経て現独立行政法人国際協力機構理事長。



韓国の新聞「ハンギョレ」に紹介されました。              当日のファッションショーの写真も掲載されました。

                    


ファッションショーのモデル出場者は30名以上。


ネパリ・バザーロの服を素敵に着こなしてくださったモデルの方々。

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