人と出会い、心通わす
関西ツアーの報告
ネパリ・バザーロ・ツアー 2007年5月26日(土)〜28日(月)

 全国の様々なお店、団体、協力者・・・1992年のネパリ・バザーロ(以下ネパリ)設立以来、たくさんの方々に出会い、想いを語り合い、同じ志で、助け合い、励まし合い、今日のネパリが作られてきました。
 そうして出会った素晴らしい方たちを、ネパリで働くスタッフにも会わせたい、各地で頑張る人たちの熱い想いを共有して、ネパリの力にしたい、そしてネパリの想いを各地に伝えたい・・・そんな願いで始まったネパリ・ツアー。5月のワールド・フェアトレード月間に合わせてお話会やイベント協力もしつつ、これまで、花巻、新潟、沖縄、北海道、高山などを訪ねてきました。そして、2007年は京都・大阪の旅となりました。
 ネパリのスタッフ、ボランティアに、いくつかの小売店の方々、さらに今年はネパールからの生産者ウールンガーデン(P36参照)のマティナさん、アニラさん、そして韓国のビューティフル・ストア(注)のハンスーンさん、スンウォンさんも加わり、日本語・英語・ネパール語・韓国語が飛び交う旅となりました。

(注)ビューティフル・ストア:弁護士のパク・ワンスンさんが始めた「収入の1%を困っている人々に使おう」運動で財源を集めてできた、韓国の有名なNGO。2005年には、ネパリ・バザーロの協力を得て、ネパールコーヒーの輸入を始めた。


「楽天堂」の豆ランチパーティーで出会った方々と、乾窓院の境内で。



新幹線に初めて乗ったアニラさん(写真左)とマティナさん(写真右)。
マティナさんはツアー中も必死で課題のセーターを編んでいました。


2007年5月26日(土)
 京都駅を降りて、まず向かったのは「楽天堂」の豆ランチパーティーでした。楽天堂に近い乾窓院に、豆料理クラブ会員の方たちが集まってきます。腕によりをかけた豆料理やデザートを持ち寄っての昼食会です。
 昼食の前に、「何を大事にして仕事をつくるか」をテーマにネパリ代表の土屋春代が、楽天堂の高島千晶さんとのやりとりも交えながらお話をしました。「この世に生まれ、生かされている私たち。情勢が悪化し、いつ内戦になるかも分からない不穏なネパールで、人々は懸命に前向きに今を生きています。ネパールの長年にわたる状況の厳しさに、自分にできることをと始めたネパリ・バザーロ。16年続けてきた一番の収穫は人との出会い。ネパールでも日本でも、何に怒り、何を喜び、何を目指すのか、同じ感性を持つ、素晴らしい人に出会わせてもらったのが一番の財産。強いこだわりを持ち続けていれば、支持してくれる人に必ず会えます。継続は力。一人ひとりを、しかもより遠くの人を大切にし、尊重して、初めてグローバリゼーションといえます」


写真右から「楽天堂」の高島千晶さんと高島無々々さん。


2007年5月27日(日)
 翌27日の午後に向かったのは、「あいね」の原いね子さんが中心となり、「未来をつくるフェアトレード」と題したイベントを開催している高津神社でした。境内に所狭しと出店が並び、にぎわっています。ネパリの衣類にみずみずしいオーガニック野菜を描いたブースもありました。屋内では土屋春代の講演会が開かれました。会場には若い方々の参加が多く、お話も若者向けのメッセージとなりました。「ネパールの状況の厳しさを中学生時代に聞き、子どもの頃にはボランティアをしていましたが、大人になり毎日の生活に追われ、世界の状況に無関心になっていたことに気づき衝撃を受けました。『何かしようと思ったら、いつか環境が整ったら、ではなく、気づいた今、しなさい』という犬養道子さんの文章に背中を押されてネパールを訪れ、自分のすべきことを見つけ、ネパリを起ち上げました。あまりの困難の多さに潰されそうになりながら、もう止めることはできず必死でコツコツと続けるうちに、人とつながり、信頼が生まれ、成果となって表れました。国際貢献に関心のある若い方は多いですが、実際に仕事に就く人は多くありません。『いつかそのうち』と思っている人にはこの仕事はできません。仕事は生き方そのもの。自分にも周りにも納得のいく仕事をしていくことで、価値観、世界観が芯から変わります」


写真左が「あいね」の原いね子さん。


高津神社の境内は、フード、エコロジー、フェアトレード商品の出店や
ファッションショーが行われ、多くの人で盛り上がっていました。


2007年5月28日(月)
 最終日の訪問先は、京都の「めぐみホーム」でした。ネパリの商品と共に、障がい者施設で織られた美しい「さをり」の作品が並ぶ店内で、所長の多芸正之さんのお話を伺いました。
 「めぐみホームは、障がいの有無、種別を問わず人々が集う場として1988年にオープンしました。補助金を得られる制度の枠を超えた活動なので、資金作りのために障がい者の作品を売っています。『障がい者でも』できる作品ではなく、『障がい者だからこそ』作ることができる独特な作品を、施設を回り探してきました。障がい者の作品にぬくもりがあるのは、ひとつの作品ができるまでに、たくさんの人の手が必要で、たくさんの想いが詰まっているからです。そして、店に置かれ、多くの人に見られることで、さらに作品は輝きを増していくのです。使い手であるお客様に作品のことを伝えられるよう、作者を訪ね、作品に込められた作者の心の中を探ります。大切な作品ですから、丁寧にラッピングをして、贈り物ならばそれにあわせた手書きののしを付けてお渡ししています」
 穏やかに、そして熱く語る多芸さんのお話は、私たちネパリ・バザーロの想いを言葉にしていただいたように、多くの重なるものがありました。もっともっとお話をしたいところでしたが、帰りの新幹線の時間が迫り、またの再会を楽しみに帰路に着きました。


写真右から「めぐみホーム」の
多芸正之さんと廣野智子さん。


「めぐみホーム」ではおしゃれで素敵な「さをり織り」の服に夢中になりました。


 今回のツアーでは、他にも「あすいろ」「クラフトカフェ イーハ」「accha」「いるふ。」などのお店を訪問し、それぞれの店で個性あふれる店主にお会いし、交流を深めました。京都の町並みに溶け込む古い建物に、増田弓さんが商品一つひとつをとても大事にディスプレイした「あすいろ」。宮本佳緒里さんが自作のパッチワークの小さな布1枚1枚の思い出と思い入れを熱く語ってくれた「いるふ。」。お客様が阿字地千佳子さんを応援しようと自発的に看板やディスプレイに協力し、店を盛りたてている「accha」。そして「イーハ」では、店内のユニークな作品に歓声をあげている私たちに「ここの作品は全部変差値が高いからね」と新田千恵子さんの一言。以後、「変差値」が私たちの流行語になりました。訪ねたどのお店も、こだわりを持って商品を選び、愛情を込めてディスプレイした素晴らしい店内で、同行した小売店の方たちにも大いに刺激になったようで、お話が弾みました。ネパリのスタッフも山ほどの元気をもらった3日間でした。



「accha」の前で。この日のために、わざわざ遠くから
来てくださったお客様もいらっしゃいました。


「accha」の店内はたくさんの商品で賑やかでした。


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