クッキーとケーキ作りのその後
仕事を通して生まれる自信

ネパリ・バザーロ(以下ネパリ)の定番お菓子、クッキーとケーキ。
これを作っている「かたくりの里」と「きらら」で、働いている皆さんが
この仕事をどのように感じているのか、お話をお伺いしました。



「かたくりの里」仕事への責任と次へのステップ
 「かたくりの里」ではクッキーそのものはもちろん、包装の美しさにもこだわりを持っています。ネパリが2006年秋にパッケージをリニューアルした時、針金でタグをとめるようにしましたが、外れやすいので改善をお願いしました。皆はいろいろと研究し、外れにくく、かつ美しく見えるように工夫を重ねたそうです。タグを担当する女性は、「始めは上手くとめられなくて、どこができないのかを考えて、今の力加減とコツを掴みました。ネパリからクレームを受けると、本当に衝撃を受けます。注意してやったのにダメなものがあった時はショックです。でも衝撃があると改善しようと更に注意します」と話してくれました。問題と向き合い、それを原動力に改善を行おうとする強い責任感を感じました。オーブンを担当する男性は、焦がさないようにと焼き色を確認しながらこまめに温度調整をし、袋にクッキーを詰めているグループの皆は、種類が変わる度にクッキーの計量皿をきれいにし、風味が混ざらないように気を配っていました。様々なアイディアや問題解決方法はスタッフとメンバー皆とで共有し、改善意識を常に持つようにしている姿勢が印象的でした。
 できることが増えていく実感が自信になり、仕事を楽しいと思うことにつながります。かたくりの里で長く仕事をしている男性は、ネパリのクッキー作りの工程ほぼ全てができます。マーケットに通用する量と質をこなせるようになったことで自信をつけ、また本格的に働きたいと思い、就職活動に力を入れ始めたそうです。不安もあるけれど、同世代の友人たちに負けないようにがんばりたいと話してくれました。



「きらら」一人ひとりに必ずある役割
 「きらら」では現在2種類のケーキを作っています。製造開始から1年になる今では手早く作れるエキスパートが育ってきています。
 パートスタッフの佐藤亜津子さんは、「一人ひとりに必ずできる作業があって、それを少しずつ増やしています。まずは洗い物が作業の基本です。衛生面での気配りを常にできるようにするためですが、これができるようになると、同じ人がずっと洗うことは辛いと誰もがわかるので、手の空いた人がサポートに入り、自然と片付くようになりました。ひとりが多くの工程をできるようになってきたことで、お互いをカバーし合う流れができました。仕事でコミュニケーションが増えるにつれて、お昼を誘い合って一緒に食べるようになったり、今まで以上に仲が良くなったんですよ」と話してくれました。
 ケーキに付いている小さなタグの穴に紐を通して結ぶのは、手先に神経を集中する作業です。この作業をするメンバーの中に、文字盤を使って話す男性がいます。手や指を思ったように動かすことが難しく、これまでは簡単なものをカットする作業ばかりでした。メンバーの女性はその姿を見ていて、それだけではつまらないだろうと、他にできることを考え続けたそうです。そこでタグの穴に紐を通す作業を一緒にやりながら教え、今では彼一人でもできるようになりました。彼には何ができるのかと、真剣に考えていた彼女の話は深く印象に残りました。ハンディによってできることが限られてしまうと思っていましたが、挑戦する機会そのものを周りが奪わないことが本当に大事だと気づきました。
 スタッフの西岡秀樹さんは当初、ネパリから求められる品質要求に応えていけるのか不安を抱えていましたが、今は最初から高いレベルで設定していたことが本当に良かったのだと感じているそうです。やらなければと必死になってがんばるうちに出来るようになったことが、メンバー皆の自信につながったのだと実感しています。ケーキ作りは、一人ひとりに得意とする作業や役割があるので全員一丸となって取り組んでいます。ネパリからの注文を心待ちにし、次はこう工夫しよう、もっとおいしく作ろうと、注文票を見ながら毎回皆で盛り上がるのだと話してくれました。
 皆が力を合わせて作ったネパリのお菓子をぜひ召し上がってください。クッキーとケーキを手に取られたら、中身はもちろんパッケージにも注目してください。小さなこだわりが隅々にまで活きています。

社会福祉法人県央福祉会
かたくりの里
所長:小笠原靖
〒252-0804 神奈川県藤沢市湘南台2-18-1サンウエイ湘南ビル2F-D
Tel&Fax:0466-45-8512 
katakuri.office@tomoni.or.jp
「かたくりの里」は1988年に開設され、精神障がい者約28名が、製菓事業に携わっています。障がい者が、社会・経済・文化等あらゆる分野の活動に参加する機会が保障されることを目的として活動しています。2001年春からネパリのクッキー作りを手がけ、小笠原さんを中心に新作レシピを考案してきました。

社会福祉法人県央福祉会
社会就労センター きらら
施設長:安田知明
〒228-0828 神奈川県相模原市麻溝台2-3-28
Tel:042-701-8050  Fax:042-701-8051
「きらら」は42名が働く知的障がい者のための施設です。2004年4月に開設し、布製品作り、製菓、販売活動など、障がいが重くても働く喜びや充実感が持てるよう、幅広い活動を行っています。ネパリのケーキは2006年秋から作っています。

社会福祉法人県央福祉会 http://tomoni.or.jp/index.php


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