商品開発物語
シナモンクッキー
明るい日差しいっぱいの、
まどか工房のこと。

まどか工房は2000年に障がい者地域作業所として開所し、現在は25名の障がい者が働く小規模通所授産施設です。喫茶店、製菓、印鑑制作、点字名刺、受注作業などの仕事をしています。喫茶店では、ネパリ・バザーロの雑貨や食品も販売しています。

 

 大好評のネパリ・バザーロ(以下ネパリ)のクッキーに新しくシナモン味が登場するにあたり、今回新たに「まどか工房」が製造を引き受けてくださることになりました。クッキー作りの話が持ち上がったのが2007年6月。それから詳細を詰め、何度も試作を重ね、先輩格の「かたくりの里」にも研修に行き、ようやくレシピが完成した10月、取材のために訪問しました。
 作業所2階のキッチンに、この日は5名のメンバーが白衣とマスクを身につけてスタンバイ。棒状に固めておいたクッキーの生地を包丁で均等に切り、鉄板に並べ、オーブンに入れていく作業を、職員に教わりながら丁寧に進めています。シナモンの甘い香りがオーブンから漂ってきたら、次はパッキングです。緊張しながら重さを量り、袋に詰め終わる頃には、ちょうど終業の時刻になっていました。
 メンバーの皆さんが帰宅してから、担当職員の飯塚豊江さんにお話を伺いました。「まどか工房は仕事の場です。障がい者の仕事だからと許されるものではなく、自主製品でも下請け作業でも最後に手にするお客様に満足してもらえるよう、手を抜かずに責任を持ってしっかりと働くことを大事にしています。もちろんそのためにも、メンバー一人ひとりが自信を持って取り組めるよう、失敗も次に活かし、一歩前進できたらそれを皆で喜び、できる事を増やしていくことを大切にし、言われてやるのではなく、自主的に取り組めるよう配慮しています」
 それでも、作業所を起ち上げた7年前、メンバーに渡した「給料」は月にほんの数百円でした。毎日働いているのに、何かの間違いではないかと、働き始めたばかりの飯塚さんはショックを受けました。2005年6月にショップ部門を始め、菓子製造業の認可を受け、ケーキ作りを始めましたが、ショップやバザーで売る程度の量でした。下請けの仕事もあわせて月1万円程支払えるようになりましたが、生活を考えたらまだまだ少ない金額です。さらに金額を上げるには寝ずに働くしかないのか、と思っていた時に、今回のクッキーの話があり、これなら皆の給料をアップできると嬉しくなりました。
 ネパリのことはショップを始めた時から商品を置いていたので知っていましたが、そのネパリのクッキーを作る障がい者施設を探していると聞いて手を挙げた時も、「ぜひやりたい!」と思うと同時に、そんな雲の上にあるような仕事を本当に受けてしまっていいのだろうかと心配もしたそうです。実際にレシピに沿って1日100袋作ってみて初めて、これならできる、夢じゃないんだ!と自信が持てたそうです。「無理と決めつけてやらずにいたら、できないままで終わってしまいます。失敗を恐れず取り組めばできるのだと実感できました。これは、メンバーだけでなく、まず私たち職員にいえることです。職員がだめだと思っていたら、本当に何も生まれません」これまでの作業では、皆と一緒にいるのを嫌がって、一人で部屋にこもって作業をしていたメンバーが、ネパリのクッキー作りに声をかけたら、とても上手に包丁が使えることがわかり、しかも自分から進んで「午後もやりたい」と言ってくれたそうです。「彼にとって、大きな自信になったのだと思います。職員も今までと違う作業をする中で、メンバーの意外な得意分野や秘めていた力をたくさん発見しています」
 ネパリのクッキーの本格始動はまだこれからで、今はメンバーが一人でできることも限られています。「かたくりの里」のメンバーのように、職員がいなくても自分のすべきことが分かり、自発的に動けるようになるのを目指して、今は道具や工程の工夫を重ねているところです。「本格的に商品として作っていくこれからが、本当の壁にぶつかる時だと思います。軌道に乗るまでは皆でバタバタと試行錯誤しながらになるでしょうが、嬉しいご縁で出会えたこの仕事を、誠実に、楽しみながら拡げていきたいと思います」


仕事の後でお話を伺いました。
給料が上がったら、本を買いたい、ゲームを買いたい、飛行機に乗って旅行に行きたい、
おばあちゃんにテレビを買ってあげるんだ、という人も。



焼きあがったクッキーを同じ分量で詰めていきます。ぴったりのグラムを入れるために、みんな真剣です。



しっかり者の由美さん。最後のパッキングも気を抜きません。



自分の目標がしっかり立ててありました。
仕事をがんばるという人がすごく多く、まどか工房の前向きさが伝わります。



今回お話をしてくれた飯塚豊江さん。


社会福祉法人 夢21福祉会
まどか工房
代表:山口博之
〒241-0023
神奈川県横浜市旭区本宿町18-14
Tel:045-360-1885  Fax:045-360-1806
(ショップ)神奈川県横浜市旭区鶴ヶ峰1-30-9
http://www.k3.dion.ne.jp/~madoca
madoca@r6.dion.ne.jp

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