ネパリ・バザーロ スタッフ座談会 2007年7月8日
私たちが大切にしていること

 ネパールから事務所に入荷した商品を直接受けて、開梱、仕分けし、ご注文の商品の検品、梱包、出荷まで外注せずに自分たちでしているのは、ネパリ・バザーロ(以下ネパリ)設立以来大事にしているこだわりです。それはなぜか、日々働いているスタッフたちが、想いや目指していることを語り合いました。

生産者とお客様の橋渡し役としてのこだわり

長部愛(以下長部):商品の注文が増えると出荷を外注するところが多いですが、ネパリは自分たちで全部やりますよね。

宮里歩(以下宮里):出荷を自分たちでやるということは、検品をするということです。お客様からのクレームだけでなく、自分たちで検品して見ているから、不良に気づくのが早く、そして、すぐに生産者に伝え改善ができます。

高橋百合香(以下高橋):ネパールから届いた商品を受け取る時も、それぞれの生産者が大事に梱包している姿が思い浮かんで、みんながんばっているな、と直接つながっている実感があります。

入澤崇(以下入澤):入荷は好きですね。改善が分かる。梱包に関しても、こんな細かいことまで言っていいのかと思いながら百合香さんに言ったら、次から変わっていて感動しました。外部に出していたらここまでネパールに直結しないと思う。

杉澤佑美(以下杉澤):マサラの入荷の日は覚悟して取り組みます。金属探知機が反応しないといいなと思いながら、鳴ったら、そのつど報告して、ネパールに改善を求め、どんどん良くなっています。

宮里:思い出すのは杉さんのターメリックパック(笑)。金属探知機は通したら終わりではなく、鳴ったら、開けて、調べて、顔がターメリックで黄色くなるまで調べていましたね。

長部:出荷は軽作業、単純作業と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、いろいろなことに配慮しなければできない、ネパリらしい仕事だと思っています。

栗田利都子(以下栗田):届いた商品をしっかり把握してお客様に出したいというネパリのこだわりが好きです。外注に出したらネパールへの反映も遅れるし、検品の基準も共有できないので、自分たちでの出荷にこだわりたいと思います。

宮里:ネパールから届いた時の感動をそのままお客様にお届けしたいので、出荷を他には任せられません。箱を開けた時にお客様に喜んでいただけるよう工夫もして包装しています。お客様への手書きのメッセージも設立以来のこだわりです。単なる通販ではなく、気持ちがこもっていると思えて嬉しい、と言っていただけます。

村井杏子(以下村井):毎回注文をくださるお客様と文通のようになることがあります。つなげたのは物だけれど、一般マーケットにはないつながりがありますね。

商品を大切にすることは、作っている人を想うこと

長部:作った人一人ひとりを思って検品し、不具合のあるものはお直しします。

一条浩美(以下一条):丈を切って短くしたり、染め直したり仕様を変えて、直営店ベルダで販売することもあります。なるべく最後の一枚まで商品として出せるように努力しています。以前、在庫になったショールをネパールに持って行き、スカートに作り直したら、デザインがとても好評であっというまに売り切れ、更に追加もしました(笑)。コットンの手編み帽子をバッグに作り変えたこともありますね。

杉澤:通常ならば、捨てたほうが安あがりで効率的なのに、手間と時間とお金をかけても直すのは、商品への愛情です。ただの物と思わず、商品の背景を知って、大事にしたいと思うからです。

長部:お直しが必要ないように品質を上げる努力を生産者と共にしていますが、工業製品のような均一なものを求めたり、あまりに完璧を追及すると環境に負荷がかかることもあります。手作り品に触れたことがなく、機械で作った商品しか知らなかった新人スタッフが、最初の頃はどう検品していいかわからず困ったそうです。3ヶ月仕事をして変わってきました。最初のころの検品ではたくさんの商品を不良品扱いしていましたが、草木染めの小さなシミのようなものが実は花粉だとか、作り手の状況や気持ちを徐々に知ってから、こんなに大変な思いで作っているのだから、何とか理解していただきたいと思うと言っています。お客様にも自信がなくて説明できなかったことが、今は理由を説明できるようになりました。

高橋:草木染めは、むらなく染めることが本当に難しい。1点1点手をかけて作っているものを買えることは大変な贅沢だと思います。お客様のクレームへの対応の時も、そうした状況をお伝えしていくことは大切だと思います。ネパールの生産者へクレームする時も、ちょっと言ったことで動いてくれるのは嬉しいのですが、影響が大きいので、本当にいけないことなのか、原因が実は生産者以外の所にあるのではないかと考える必要があります。

一条:日本で検品して言おうと思ったことも、現地の状況を見ると仕方のないことに思え、言うことが酷に感じられてきます。でも売れなければ暮らしはよくなりません。直してもらいたいものはやはり言わなければという、心の葛藤があります。厳しい状況は分かるので一度にたくさんの改善は難しいですが、なるべく良いものを送ってもらえるよう、ひとつずつできることからしてもらえるよう伝えていきたいと思います。だめだった理由と、改善方法が伝わると、皆すごくうれしそうで、ほっとします。

ネパリで仕事をして変わったこと、
見えてきたこと、今後の抱負

高橋:自分のすることが社会や世界とつながっていると感じるようになりました。自分のひとつの選択が、良くも悪くも、直接ネパールの生産者に影響したり、お客様に影響したり。自分ひとりで生きているのではないと思います。一人の力は小さいですが、それでも影響は大きいと知り、希望が見えてきました。

宮里:ものの価値観が変わりました。ひとつの商品に対しても、想いや価値を意識するようになりました。5年があっというまに過ぎようとしていますが、ネパールの女性も仕事をすることで自信をつけていくように、自分も一緒に働き続けることで自信をつけて変わってきています。

杉澤:大きく変わったのは、仕事を続けると言うこと。今までは、結婚したら辞めて、夫が転勤したらついていくものと思っていました。ネパリに入って、先ず自分がどう生きたいかを考えるようになりました。仕事ができなくて落ち込んだ時も仕事が嫌なのではなく、自分が頑張ってできるようになればよいのだ、続けていきたいと思いました。そういう仕事に出会えて嬉しい。

村井:本当に英語が駄目で、海外に行ったこともなく、興味もなかった自分が、韓国の顧客を担当し、できないと思っていたことをするようになって、自信が持てました。通じ合えたと思えることが自分で驚くほど楽しい。前の仕事場はマニュアルがあって、その通りにやれば良かったのですが、ネパリでは自分で考えて仕事をしていけることが大きく、自信を持てるようになりました。出産、子育てなど環境が変わっても、その時々にあった仕事がネパリではできると思います。この仕事が本当に好きで楽しくやっています。

一条:お直しを始めた時、直し方がわからず、聞く人もなく、どうしようと思いつつやっていましたが、注意したことの改善が進み自信になりました。ネパールの生産者から現地の話を聞いて、これは続けなければいけないと思い、今に至っています。

入澤:何度か自信をなくしたこともありましたが、それでも踏ん張りたいと思ったのは、ネパリのやっていることが好きだったし、信じていたから。ネパールの人にも助けられました。励まされ、好きになり、それが原動力になります。

栗田:仕事に対するものの考え方が変わりました。生きていくには仕事は必要だし、続けるにはもっと自分に厳しくならないといけないなと、ネパールの人たちの状況を見て思います。自分たちがネパールの人の生活を支えている、と感じると同時にネパールの方たちに自分たちの生活を支えてもらっているとも思います。

長部:以前から知識としてのフェアトレードは知っていましたが、フェアトレードという言葉を超越し、現場を大切にし、一つひとつの商品を大切にし、一人ひとりとつながってやっているのがネパリだと何年もかけてわかってきました。現場で何が起こっているかを感じながら働けるからこそお客様に伝えられる。戦争のニュースや、政治にしても、怒りを感じ、何が自分にできるのかと考える時に、ネパリの仕事が社会を変えることにつながると思ってやっています。応援をしてくださる全国のお客様や同じ志の人にたくさん出会えることはすごいと思います。ネパリを理解してつながってくださる方と、こだわりや目指すことを共有し、自分にできることを精一杯やって、様々な問題を抱えるこの社会を少しでも変えていけるように努力したいと思います。       



長部愛
約5年。総務担当
営業や商品部も経験し、数多くのお客様に接し、ネパリの存在意義と責任の重さを実感。


宮里歩
約5年。商品部
検品、出荷を担当する商品部のリーダー。お客様に喜んでいただけることが一番嬉しい。


高橋百合香
約4年。開発担当
発注、品質改善など生産者との交渉を担当し、年に数回ネパールに行く。様々な困難を体感、眉間に皺。


入澤崇
約6年半。商品部
スタッフでは一番古く黒一点。女性が多いFT界で弾かれないように、頑張る。


杉澤佑美
約3年半。直営店&
ネットショップ担当
障がい者地域作業所との交渉担当もし、福祉政策の実態を知り、怒る。


栗田利都子
約5年。商品部
活動に共感し、ボランティアからスタッフに。他のスタッフに比べて一番遠いが、約1時間の通勤時間をネパール語習得に活用。


村井杏子
約4年。開発担当
結婚を機に横浜へ。ひょんなことからスタッフに。仕事のおもしろさにはまる。


一条浩美
約6年半。技術専門員
修理部門のリーダー。どんどん仕事の幅を広げ、生産者に渡す服のサンプルやニットのパターン作りまでこなす。

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