商品開発物語
Asian Ama Nepalより

天然素材アローの雑貨たち



 ネパールから、天然素材「アロー」を使ったアクセサリーが届きました。ビーズを組み合わせて、ナチュラルな中にも洗練された印象があります。アローとは、標高2000mから3000mの高地に生える巨大イラクサで、高さ3m、茎の直径は4cmにも育ちます。耕作に不適な土地にも育つので、素材を活かした、マーケットに合う製品を作ることができれば、生活の厳しい村の人々の貴重な収入源になります。アローがアクセサリーとなり、私たちの手元に届くまでの、長い道のりをご紹介します。

 アローの故郷は、世界最高峰エベレストの麓。首都カトマンズからプロペラ機で東へ約1時間、そこから3日間歩き続けてようやく辿り着くサンクワサバ郡の山の中。水に浸かった道を行き、丸太にしがみつきながら川を越え、岩にかじりつきながら前に進み、やっと村に到着します。さらにそこから3日間かけてジャングルに入り、ヒルの襲撃をくぐり抜け、アローを収穫します。そして村に持ち帰り、アローの繊維から女性たちが糸を紡ぎます。小さな携帯用の糸紡ぎの道具を使い、歩いている時も、子どもをあやしている時も手を休めることはありません。その糸は、収入向上を目指して結成された「アロークラブ」を通して、通信・交通手段もない山の中から、首都カトマンズまで運ばれます。
 ようやくカトマンズまで辿り着いたアローは、そこから西に十数キロ離れたタンコット村にある「Asian Aama Nepal」というNGOの工房で、素敵なアクセサリーになります。私たちにカラフルなビーズのアクセサリーを届けてくれている「クンジビーズ」代表クンジャナさんの娘、クンナムさんが、10年前に6人のメンバーと共に起ち上げたNGOです。クンナムさんは、ネパール南部タライ地方の夫の出身村の女性たちの生活の厳しさを知り、自分にもできることがないかと考えました。そこで、もともと好きだった手作りを活かして、アローなどネパールの天然素材とビーズを組み合わせた商品をデザインし、その収益金で、タライのマデシ(注)と呼ばれる人々の村の教育や医療支援などの活動を始めました。
 タンコットの工房では10人くらいの女性たちが仕事をし、4人ほどの女性が家で仕事をしています。クンナムさんは、困っている人がいないか、仕事を必要としている人がいないか、いつも気にかけています。停電が多いネパールでは、機械を必要としない手作業の仕事はとても貴重です。女性たちは、アローやヘンプを編んでアクセサリーを作るのは最初は難しかったそうですが、今は楽しそうに働いています。花のモチーフを編むのは2時間くらい、ロングネックレスは、3、4時間かかります。一番腕がいい、デザインも担当しているビンドゥさんは、さすがにするすると編んでいました。
 そうしてようやくできあがった商品は、日本に運ばれ、私たちの手元に届きます。多くの人の手が加わり、温もりがあるアローのアクセサリー。この夏の装いに加えてみてはいかがでしょうか。


「ほら見て、素敵でしょ」とビーズで作ったサンプルを見せてくれました。



手先に神経を集中する、細かい作業です。一編み一編み、丁寧に編んでいきます。



赤、紫、花柄などの鮮やかな色のパンジャビで工房は華やかです。
みなさんおしゃれが大好きです。


生産者の声から
クンジビーズの皆さんはそれぞれ熱い思いを持って活動しています。



ビンドゥさんのお話
ビンドゥさんは、10年間この仕事をしています。また、8年前に11人の仲間と共に「Thankot Women Awareness Group」というNGOを作り、活動もしています。今では、村の女性のうち約400人がメンバーとなって共同組合を作り、毎月皆で少しずつお金を貯蓄して、メンバーが病気になった時や、子どもを学校に行かせる時など、どうしてもお金が必要になった時に貸し出せるようにしています。最初は、女性が外に出たり、グループを作ったりして自分たちより強くなったら困ると反対していた村の男性たちも、成果が出てきたので、少しずつ理解してくれるようになったそうです。

クンナムさんのお話
「Asian Aama Nepal」は、タライ地方のある村に学校を作り、地域の子どもたちに無料で授業を開放しています。しかし、ほとんどの親たちが学校に行ったことがなく、教育の大切さが理解できないので、 最初は一軒一軒家を回って親を説得したそうです。地道な活動でしたが、最近ようやく理解されるようになりました。また、定期的に遠くの町から医者を連れて村々を回り、無料で診察をしたり、学校で衛生授業を行ったりしていました。最近は小屋を作り、村人たちが無料で簡単な治療程度は受けることができるようになりました。ただそれさえも、話を伺った時は治安悪化のため、閉鎖してしまっている状態でした。

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