商品開発物語
ネパリ・バザーロの商品ができるまで

サヌ・バイさんの工房から



  温もりのある洋銀のカトラリーや繊細なシルバーのアクセサリーを、一つひとつ手作業で作っている
    サヌ・バイさん(59歳)。いつも必ず、明るい光が差し込む窓辺の席に座って、黙々と商品を磨いて
  います。最終工程の磨きは、商品の善し悪しを左右する大切な工程なので、必ずサヌ・バイさんが
  チェックします。いつまでも現役で仕事をしたいと言います。

  スプーン一本を作るのにも、たくさんの工程があります。まず火をおこし、洋銀を溶かします。
  その間に型取り用のスプーンを土に押し当てて鋳型を作り、そこに溶けた洋銀を流し込みます。
  型を開けると、見事なスプーンができあがっています。その後、やすりで何度も削り、表面を滑らか
  にし、細部まで磨き上げて完成です。一つひとつ鋳型を作り直すのはとても手間のかかる作業ですが、
  サヌ・バイさんは、「これからも、この私たちのやり方をずっと続けます」と、いつもと変わらぬ
  口調で淡々と語ります。

  サヌ・バイさんとの出会いは、もう10年以上前のことです。代々鋳物職人一家のサヌ・バイさん。
  15歳の時から、父について仕事を学んできました。昔はアーミーバッジやベルトのバックル、
  お土産用の小さな仏塔などを細々と作っていましたが、小さな生産者と海外のバイヤーをつなぐ
  マーケティングのNGO「サナ・ハスタカラ」のマネージャー、チャンドラさんを通してネパリ・
  バザーロ代表の土屋春代と出会い、スプーンやフォークなどの実用的なアイテムを作るようにな
  りました。

  サヌ・バイさんの仕事に対する誠実な姿勢と、あたたかい人柄が商品にも表れ、彼の作ったカトラリー
  は定番商品となりました。何度サンプルのやり直しをお願いしても、大変細かい要求をしても、
  全身全霊でこちらが言おうとしていることを聴き、快く応じてくれるサヌ・バイさん。そのため品質
  が向上し、アイテムも増え、現在は、シルバーのアクセサリーや洋銀のプレートなども作るように
  なりました。サヌ・バイさんファンのお客様も確実に増えています。

    

  サヌ・バイさんの工房では、息子のゴパールさんとゴクールさん、村から出てきた2人の若者が住み込みで働いて
  います。「まだまだたくさん作れます!いい仕事をするので、たくさん注文をください!」と、皆口をそろえて言い
  ます。

  
 4階建ての建物に、サヌ・バイさん夫婦は、2人の息子家族と一緒に暮らしています。
 どの部屋も、必要最小限のものが、きれいに整理整頓されています。
 妻のプタリ・リジャルさんは、寡黙なサヌ・バイさんとは対称的で、太陽のように明るい女性です。
 毎朝2時に起き、ヨガをして、4時にはサヌ・バイさんが起き、6時から甘いミルクティーを飲んで、
 仕事を始めます。注文がたくさんある時は、プタリさんも手伝うそうです。ただ、最近は計画停電に
 よって電気が使える時間が限られているため、停電スケジュールに合わせて仕事をしなければならなく
 なりました。たくさん注文があるのに、電気がなくて仕事ができない時は、本当に悔しいそうです。
 「仕事があって、家族にごはんを食べさせられることが一番の幸せです」と、サヌ・バイさん夫婦は
 顔を見合わせて言いました。

         
  工房に行くと「仕事の前に、まずは一杯」と、甘くて熱々のミルクティーを出してくれるサヌ・バイ   さん。今回は、朝ごはん(ネパールでは、10時頃に朝ごはんをしっかり食べます)に招待してくれま   した。サヌ・バイさんは探究心も旺盛で、私たちが工房を訪ねると、身につけているアクセサリーを   チェックし、気になると、顔を近づけてじーっと見ます。サンプルで作ったブレスレットを気に入った   時は、自分でつけてうれしそうに見せてくれたりします。時折覗かせる純粋な子どものような笑顔や、   表情から溢れる仕事への誠実さ、商品への愛情が、サヌ・バイさんの魅力です。

   

サヌ・バイさんのピアスシリーズに、夏らしいデザインの貝と、存在感のあるパールが加わりました。 夏の装いのアクセントに、手作りアクセサリーはいかがでしょうか。


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