〜2009秋冬展示会ショップ座談会〜 フェアトレードショップと 自治体との協働に向けて



世界的経済危機が日本を襲い、根本的な世の中の仕組みが問われ、まさにフェアトレード的な視点が必要な
時を迎えています。フェアトレード団体、企業、自治体が一丸となって取り組まなければ、持続可能な社会は
難しいでしょう。地域の自治体と協働してフェアトレードを推進する道を探るため、菅沼彰宏さん
(財団法人かながわ国際交流財団学習サービス課)と松本義弘さん(横須賀市企画調整部国際交流課長)を
卸先対象の秋冬展示会に招き、モデルケースとして具体的な話をして頂きました。


松本義弘
横須賀市企画調整部国際交流課長。
熱い想いで、分かりやすく明快にフェアトレードの必要性を訴えます。


菅沼彰宏
財団法人かながわ国際交流財団学習サービス課勤務。
イベント時など、いつもネパリ・バザーロの活動を応援し、支えてくれています。


丑久保完二(以下完二):県の施設「あーすぷらざ」(以下ぷらざ)に直営店「ベルダ」を開店した1998年
から館内でイベントを開催してきました。2000年からネパールデイを共催する中で県とつながりができ、以後
「ぷらざ」を運営するようになった神奈川県国際交流協会(現かながわ国際交流財団)とも協力体制ができま
した。

菅沼彰宏:「ぷらざ」には、子どもの豊かな感性の育成、地球市民意識の醸成、国際活動の支援、の3つの
目的がありますが、「ぷらざ」とネパリ・バザーロ(以下ネパリ)は、その目的に沿った事業として、それ
ぞれの特性を活かしながら「ネパールデイ」を協働で開催してきました。また、毎年開催している県立神奈
川総合高校のワンコインコンサートは、高校生が学びながら参加者にも気づいてもらうというもので、初回
の反省から、顔の見える募金をしたいと思っていた彼らにネパリを紹介し、納得のいく寄付が継続的にでき
るようになり、コンサートも軌道に乗っています。
他にも、開発教材「カレーキット」は、完二さんに現地取材もしてもらって作りました。
目的をフェアトレードに絞って「ぷらざ」に来る学校には、ネパリスタッフが話をしてくれることもあります。
 神奈川県では、地域で活動している市民の意見を県の政策に反映させていく「NGOかながわ国際協力会議」
を1998年から行ってきました。第4期の委員の一人に完二さんが加わったこともあり「フェアトレード理念
を県が率先して発信し、普及を図る」という文言を提言等に入れることができました。役所がいろいろと行
動していく時にこうした提言書にフェアトレードが載っているのは大きな意味があります。
さっそく県は、フェアトレードをまず知ってもらおうと自治体関係者を集めて研修会を開催しました。

松本義弘: 2008年1月23日、「かながわ自治体の国際政策研究会」の研修会で完二さんがネパリの活動を
報告しました。その時、心から感動したことをノートに書いたメモを一つひとつ実行したのが横須賀市の取
り組みです。何を書いたかというと、まず“フェアトレードの推進は途上国支援にとどまらず、途上国の
貧困改善により教育が向上し、世界的な紛争が必ず減少する、という参加型の平和学である”こと。
“「市民平和の集い」のテーマをフェアトレードに”と書いて、昨年夏に完二さんに講師をお願いしました。
それから、“年4回の国際式典レセプションでフェアトレードコーヒーを提供”と書き、実現しています。
“フェアトレードを多文化共生講座のテーマに”とも書いて、講座の一つでネパリ主催のセミナーに参加す
ることになりました。次世代を担う中高生に多文化共生を伝えていく「国際ユースフォーラム」でもフェア
トレードをテーマにしました。地味ですが、こうしたことを一つずつ実施してきました。
 熱意をぶつけてみると、壁は思ったほどには高くありませんでした。
最初に手掛けた式典のコーヒーは課内判断ですぐに取り組めましたが、集客力の高い他のイベントになると
他部局の判断になります。
そこで、
@国際式典のレセプションでフェアトレードコーヒーを提供する、
A平和啓発事業にフェアトレードコーヒーを提供するブースを設ける、
B市で主催する集客イベント等の開催に合わせてフェアトレードの啓発を行う、
という3つの姿勢について市長の決裁をとりました。
これで他の部局の協力を得やすくなりました。
現在では、国際協力、環境保全、平和啓発の視点からフェアトレードを紹介しています。

完二:菅沼さんも実際には色々と課題を乗り越えながら協力いただいています。
ハイスピリットに感心します。フェアトレードは行政とつながることにより、教育、人づくり、平和学とい
う意味でも、子どもたちが大きくなって世界の問題を解いていくエネルギー源になると思います。

土屋春代:今、コミュニティの崩壊といわれる中、市民と自治体が新しい市民社会を再構築する時期です。
フェアトレードは平和、環境、ジェンダーと間口が広く、市民が主体的にかかわり、
自治体とタイアップすることでいろいろなことが可能になり、地域が連帯する核の一つとなり得ます。
最終的に、グローバルな市民連帯を目指しています。

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