お勧めの映画「ヌマフン」と「キャラバン」から

ネパール映画情報

初めてネパール映画が製作されて50年が過ぎました。現在のネパール映画界は新進気鋭の監督たちが目白押しで、ここ数年かってない活況を呈しています。標高5,000メートルのヒマラヤの大自然を舞台に、厳しくも心温まる村人たちの暮らしを描いた映画「キャラバン」に続き、ネパールでも話題の「ヌマフン」(ビューティフル・フラワー)は、日本でも昨年のアジアフォーカス・福岡映画祭で上映されました。
 ヌマフンは、人口2.5%を占めるリンブー族の物語。ネパール東部からシッキム、ダージリン、アッサムに分布しています。この物語は、見も知らぬ男性と結婚する娘の保護のために男性から女性に贈られる金品が、今日、娘の売買の道具に使われることを描きだしています。父親は2度、娘を結婚させます。その2度目は、本人は承諾しないなか無理やり結婚。そして2回とも失敗し、最終的に自分が好きで選んだ人と結ばれるというお話。「現在の多くのネパール映画は、ネパール社会をそのまま映し出すことができていません。一番の関心事は、如何にその状況を盛り込んでいけるかということ。それなくしては、インド映画にも対抗していけないでしょう」、とこの映画制作にあたったナビン・スッバ監督は熱く語ってくれました。「現在の反政府勢力(マオイスト)問題も貧困から起きています。1990年の民主化が成熟しないこと、民族問題(特に、25%を占めるアウトカーストの問題)、と女性問題です。ネパール200年の歴史の中で、そのアウトカーストの人々は常に虐げられてきました。マオイスト問題が解決したとしても、同様の問題がでてくるでしょう。映画にかかわる人たちも、このようなことを良く考え、文化的側面から改善に向けて取組みたいと考えています。ネパール映画を真剣に考えている人々は、全ての民族が一様に扱われ、彼らが持っている問題が、映画を通じて理解されるようになって初めてそれらの問題も解決されていくと考えています。」
 今年は、フランスにもこの映画が紹介されるようです。キャラバンのようにロングヒットとなるか、興味深いところです。 
    (2002年9月23日(社)日本ネパール協会主催講演会と、ナビン・スッバ監督からの情報より。)

すばらしい映像とドラマ「キャラバン」

 ネパールで一昨年の春先に上映され、多くの人々の心を捉え話題作となりました。村人達が話すドルポ語は、多くのネパールの人々にとっても理解できない言葉です。英語字幕を見ながらの鑑賞でした。ドルポはヒマラヤを越えた向こうにある地域で、飛行機もヒマラヤの強風に煽られて欠航が多く、徒歩では、その地形から訪ねるのも大変なところです。
 皆さん、もうご覧になりましたか?写真右端の老人は誰かわかりますか? そう、映画では長老ティンレ役のツエリン・ロンデゥップさん。地元ではヒーローと呼ばれているそうです。
 この高地は、宿泊施設もなく、この辺一帯が国立公園といったところです。飲食物は、全て町から空輸しなければならないので、物価も高い地域でもあります。マオイストもさすがにこの周辺にはいないと聞きましたが、昨年末にINGOの撤退もありました。影響は確実にここにも及んでいます。


キャラバン
標高5000メートルのヒマラヤの大自然を舞台に、厳しくも心温まる村人たちの暮らしを描いた映画「キャラバン」。チベットに近いドルポの村人達が、何十頭ものヤクにチベットからの塩を積み、荒れる雪山を越えて街に運び、一冬を越すための麦を手に入れる旅の様子が、村人たちのドラマを交えながら描かれています。一面に広がる麦畑、深く青い湖、土を蹴るヤクのひづめ…風景も村人の表情も、厳しい環境だからこそ美しいのでしょうか。チベットの読経を取り入れたブリュノ・クーレの音楽がimageの迫力を際立たせます。監督は、長くネパールに暮らすフランス人エリック・ヴァリ。アカデミー賞ノミネートを始め、世界中で絶賛され、ネパールでもロングランを記録しました。

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