ディベート企画 フェアトレードに未来はあるか?


◆フェアトレードとは?
 フェアトレードは、一般的に発展途上国と言われる国の、厳しい状況にある小生産者の経済的自立を支援し、生活の改善、向上を目指す貿易です。生産者の持続的な生活を考え、自立していくのに適正な価格で安定的に買い上げ、消費者に販売します。また、製品の開発に努め、力の弱い生産者が通常のマーケットに参入できるまでの成長を手助けします。消費者は、同情心から寄付代わりにフェアトレード商品を買うのでは、長続きしません。商品の価値に納得し、フェアトレードを理解し、生産者に共感して買い支えることが必要です。

◆日本での広がりは?
 日本でも、国際協力、社会の安全に対する意識、健康への再考と環境への配慮が高まり、フェアトレードへの理解が深まってきていますが、フェアトレードの認知度は、欧米と比べてはるかに低く、まだまだ一般に広まっているとは言えません。今後、フェアトレードは日本でも有効な国際協力の手段となっていくのでしょうか。多くの人々に理解されていくためには、フェアトレードに関わる私たち自身が、フェアトレードの利点だけでなく欠点や弱点を把握し、それを改善していかなければいけません。

◆未来ある派とない派でディベート
 
今回のディベートでは、「フェアトレードに未来はあるか?」をテーマに「ある派」と「ない派」に分かれ、それぞれの立場で議論を交わすことでフェアトレードを様々な角度から考える機会としました。「ない派」から出されたフェアトレードへの否定的な意見からフェアトレードについて考えてみました。

パネリスト 賛成派
フェアトレード・ショップ ふろむあ〜す 藤田康祐樹
筑波大学院生 森あい子
スタッフ 入澤、菅野、太田

パネリスト 反対派
フェアトレード・ショップ グリーンバザール 菅波慶子
日本貿易振興会 中澤桃子
スタッフ 中島、庄子
ボランティア 高橋


フェアトレード Q&A

1:品質は良いのか?

 色落ち、縫製など一般商品に劣らない品質が保たれていないと販路は広がっていきません。フェアトレード商品は、生産者が小さいこと、取組団体も草の根から出発することが多く、専門性に欠けるとみられがちです。その議論は大変興味深いものです。
 現実には、生産者と消費者の距離が近いので、品質の問題点、技術向上の工夫など情報交換が活発に行なわれ、品質の改善の可能性が一般商品よりも高いといえます。確かにやらなければならない課題も多いのですが、顔が見えている分、着実に向上していけるのも事実ですし、実践経験を積んだ専門家が後押しもしています。組織は小さくても多くのネットワークによって支えられているといえるでしょう。

2:理念が伝わるのか?
 環境問題のように自分に戻ってくることは理解されやすいのですが、フェアトレードがどう役に立つのかイメージがわきにくいという意見がありました。生産者の背景などを理解する想像力が日本人には育っていないのでしょうか。しかし、商品を買うことで貢献するというフェアトレードは、大変シンプルで分かりやすい国際協力です。
 生産工程では、織り、染め、縫製など少しでも多くの生産者が関われるように配慮し、かつ、商品開発でも市場調査に力を入れ、流行も取り入れるようにしています。
 ハンディクラフトは手がかかりますが、注文が増えればそのまま雇用拡大に繋がります。作る人も買う人もハッピーなシステムです。安全性、手作りの良さ、心のやすらぎ、環境など、商品と共に情報を届けることで、フェアトレードの理念は着実に伝わっています。イベントの参加者、ネパリ・バザーロの売上げ、フェアトレード店の増加数を見ても、その広がりの伸びを感じます。

3:価格は適正なのか?

 フェアトレードは少量生産で手間もかかるので、価格が高いというイメージを持っている人がいます。100円ショップが広まり、不景気で生活費を切り詰めている人も多い中で、フェアトレード商品を買うゆとりがあるのかという疑問も出されます。しかし、フェアトレード商品は市場価格と比べても決して高くはありません。また、消費者は価格だけで商品を選んではいません。体に良い自然食品の売上げが伸びているように、消費者は100円ショップでも、ブランド品でも、賢く選んで購入しています。フェアトレード商品も、多くの消費者にとって付加価値となってきています。次世代も含めたトータルな支持を得るには、国際理解教育も大切な要素です。

4:知る機会が少ないのでは?
 
日本での認知度はわずか5%とも言われています。現在の理解者はほんの一握りに過ぎません。フェアトレードの事を知らない残り95%の人びとに伝えるために、小売店間でネットワークを組み、イベントを開くなど、様々な工夫がされています。食品はスーパーや生協などでも扱いが始まっています。テレビ番組で取り上げられたり、学園祭などでフェアトレード商品を扱って販売会が催されたりと少しずつ広がっています。実力にあった着実な伸びを望んでいますが、ドイツなどの若者が何故、フェアトレードや有機(オーガニック)への認識やこだわりが高いかと言えば、やはり、教育に組み込まれているという面が大きいようです。 「ドイツでは、視野の広い専門家が育っています。多くの建築家が、生態系を如何に守りながら建物を作っていくかを考える傾向にあるのです。例えば、サッカー場を作るとしましょう。ゲームを昼間のように明るい環境で行えるようにしようとすると1,500ルックスは必要です。しかし、それが周りの生態系に与える影響は大変大きいので、極力、その明るさを押さえ、例えば、1,000ルックスにしようと相談するのです。日本であれば、なるべく明るくしようとするでしょう。また、ドイツの専門家の間では、フェアトレードへの意識、配慮もあり、好んでそのような製品も採用しています。更に、環境を汚さないという意識があるのです。」佐藤清(1級建築士)「ドイツ建築家の環境保全意識とフェアトレード」

5:本当のフェアトレードとは?
 少しずつ広まり始めたフェアトレードですが、その定義がはっきりしないまま、宣伝目的で使われることで、偽りのフェアトレードが広まることも危惧されます。けれど、フェアトレードが広まってくれば、本当のフェアトレードとは何かという議論も起こり、疑問も出され、本当のフェアトレードが認識されていくことでしょう。世界の4大フェアトレード組織のネットワーク、FINEでは、統一フェアトレード基準が話し合われ、IFATでは今年の7月よりフェアトレード団体認証マークの運用を始めました。製品上のマーク表示は、継続審議中です。

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