カトマンズの乗り物事情

春山洋子


ネパールの起伏の激しい地形のために問題となるのは、交通の便が非常によくないことです。カトマンズの外では、ヤクや馬、人間しか通れない道が沢山あります。
が、ことカトマンズでは乗り物は、タクシー、バス、バイク、オートリキシャ(3輪タクシー)、リキシャ(自転車でひく)、乗り合いテンプーと、とても便利です。
市内中心部の語学キャンパスに通う時、私が使っていたのは、バスと乗り合いテンプーです。この乗り合いテンプーは、3輪トラックの荷台を改造して座れるようにしたもので、6人乗りや10人乗りがあります。走る路線が決まっていて、手を挙げて合図すると、空いていれば乗せてくれ、降りる時は屋根をドンドン叩けば、止めてくれます。
バスは最低3ルピー、乗り合いテンプーは4ルピー位からです。1回1回はそれほど高くなくても、乗り継いで毎日通ったりすると、それなりにお金はかかります。 乗らずに長い距離を歩いて通っている人ももちろんいるでしょう。
バスやテンプーの中では、いろいろおもしろい光景に出会えます。
例えば、テンプーでは、幼い子どもは代金を取られない代わりに、立って乗ります。
母親と子どもが乗り込む時、たいてい他のおじさんが子どもを抱えて座るのです。
最初は、知り合い同士かな、と思いましたがそうではなく、どうやら女性に対する心遣いのひとつのようです。お母さんはすました顔で一人で座っています。
また、バスはたいてい混んでいます。日本のように時刻表などないので、ひどい路線だと次のバスが来て、クラクションを鳴らし続けるまで止まっていて、一人でも多く乗せます。バスの後ろには車掌の兄(あん)ちゃんが乗っていて、バスの行き先を叫び続けます。そして車体をドンドン叩いたり、ほれぼれするような口笛を吹いて運転手に合図をします。 もちろん代金ももれなくもらいます。(小さい男の子はこの車掌の兄ちゃんになりたがります。)
代金の払い方もまた面白いものです。すいていればバスが走っている間に兄ちゃんが集めに来ますが、一人としてさっと払う人はいません。兄ちゃんに2度3度とせっつかれてしぶしぶポケットからお金を出し、渡すのです。3ルピー区間を乗ったおばさんは「こんな に近いんだから、ハイ2人で5ルピーね」5ルピーだけ渡し、さすがの兄ちゃんもこれには負けたようです。
私はさっさと払ってしまおうと、バスの中でお財布を出して用意しましたが、それを見ていた人がいたらしく、家に帰ったらバッグからお財布が消えていたことがありました。ショックでしたが、人前でお財布を出した自分が悪かったのだと、翌日からはバス代はネパール人のようにポケットに入れることにしました。
オフィスが始まる朝10時前のバスはギューギュー、日本のラッシュよりすごいです。そんな時、むーっと顔をしかめて立っていると、前に座っている人がすごく小さい隙間を空けて「ここに座れ」と言ってくれたりします。こわい顔をしていた自分を恥ずかしく思うと同時に、日本では見られなくなった人情味に触れられてうれしくなったりするのです。
   (注:1ルピーは、約2円)

アルジュン君、SLC合格!
ビシュヌさんホームの最年長アルジュン君(19歳)が、SLC(高校卒業検定試験)に合格し、ビジネス科のカレッジ(2年間)に通いはじめました。
就職の資格や大学進学に非常に重要なこの試験に、公立の学校から合格することは非常に難しいことで、アルジュン君の頑張りに、私たちの喜びもひとしおです。

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