国際ボランティアを考える集い

太田昌治


 あの神戸の大震災を経験し、それを乗り越え大学を卒業してすぐにネパールの小学校にNGOのボランティアとして赴任した佐野由美さんの、短くも輝く時間と情熱を記録した映画の上映会と、私達が日々、ネパ一ルを中心としたアジアや南の国々の女性や子どもの人権や自立を支援して活動していることを知って頂くための講演が行われました。
 去る2月6日の夕方、横浜駅西口の県民サポートセンター2階のホールにおいてネパリ・バザーロ代表の土屋春代が「何故いまフェアトレード(FT)が必要か・どうしてFTなのか・FTの効果は・・・」などを1時間に渡りお話をしてから、話題の映画「with・・・」を上映して、佐野さんのネパールでの活動、彼女の人柄や地域の人々との心温まる交流とそこから生まれる矛盾や悩みを赤裸々に映像で伝え、見る者に感動と課題の提供をしてくれました。
 ネパールは、歴史と伝統が今も脈々と生き続けていて、自然の美しい国である一方、世界でも1・2を争う程生活が厳しい国にいて、佐野さんは自分の力で出来る精一杯のことを教え伝え拡げて生きていたのだと思いました。
 まだ、ネパールの大半の人々は食べることが精一杯で、学校に行くことがままならない子や殆ど行けない子も多いのが実状です。映画の中でも、言ってますが、学校に行きたいけど行けない、学校を卒業しても、仕事が無い人が多いことの現実に直面し、あの明るく元気な佐野さんが、悩み悲しむ場面がありました。
 今、私達が進めているFTの活動をもってしても、この巨大で出口の見えない貧困を即座に解決する術はありません。もっともっと大勢の方々の理解と協力こそが、FTへの応援となって、貧困や虐待、人身売買、児童労働など多くの問題の解決に役立つことになると思います。この映画を通して、貧困のもたらす問題とその問題を無くすためには何が必要かを考えていただく糸口が見つかるかも知れません。




国際フェアトレード・デイ

北山詠美子


 欧州の第三世界ショップネットワークNEWS!が毎年5月にセミナーやコンサートなどのイベントをしながらフェアトレードの普及を図って来ました。今年は、世界フェアトレード組織IFATもこのイベントに参加することを決め、5月4日を中心に、約40ケ国でいっせいに行われ、日本では5月をフェアトレード月間として盛り上げることになりました。
 私たちネパリ・バザーロは、「with・・・若き女性美術作家の生涯」という映画を上映し、その後で、代表の土屋春代と、現地スタッフのジャリーナ・シュレスタから、フェアトレードの活動とネパールの現状を講演し、理解を深めることにしました。
 「with…」は、ネパールで活動した日本の若き女性のドキュメンタリー映画です。縁あって2月6日に講演をお受けしたことから、この映画と佐野さんに出会うことが出来ました。貧困の課題改善にはまず仕事づくりから、と考えて活動している私たちにとって、単身ネパールに渡り、美術を通してネパールの下町に住む貧困層の人々と向き合い、その人々の日々の暮らしに必要なのは、やはり仕事を手に入れ、生活の糧を安定させること、と気付いた主人公の佐野由美さんの思いは、とても共感深く、多くの方に鑑賞して頂くことで、私たちに何ができるかを、フェアトレードの視点から深めたいと考えました。
 準備の段階からも幾度も観ていた映像ですが、会場で参加された方の真剣なまなざしとともに観ると想いも一段と深まります。一人一人に深く語りかけてくる由美さんの一途な気持ちに、心の奥に眠っていたなにかを呼び覚まされたかのように、上映の後の講演と質疑応答の時の参加された方々の言葉は普段からの会話にはない、心の奥をぐっとさらけだした白熱したものになりました。子育て中の方や、ネパールに行かれたことのある方、これから行きたいと思っていらっしゃる方、専門で研究されている分野からの真摯なご意見を下さる方など、いろんな立場の方々が、共に深く心に「何か」を刻んだ一日でした。
 佐野さんが教え子の家族ぐるみの付き合いを通して受けたショックと無力感、日本にいたときには想像も及ばなかった「貧困」のレベルの違いとその暮らしの実感を通して、自分に何ができるのか必死に考えさせられました。ネパールで差別され、差別してしまう悲しみ、辛さから行きついた「すべての人が安らかに眠れる夜を」という気持ちに、私も小さい事、出来るところからでも取り組んで、大切に育んでいきたいと思いました。そして、教え子に、手に職をつけられるようにとの願いを込めた切り絵指導は、技術を身につけて自立を図るフェアトレードの活動と通じ合い、フェアトレードの活動を大事に進めていきたいと深く感じたひとときでした。

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