現地スタッフ紹介

私の抱負


ジャリーナ・シュレスタ


 皆様、ナマステ。カトマンズに住むジャリーナ・シュレスタです。昨年初めからボランティアとしてネパリ・バザーロのお手伝いをし、今年の1月からはネパリ・バザーロの現地スタッフとして働くことになりました。今は、3ヶ月の研修のために日本にいます。女性の地位向上を願ってきた私にとって、女性たちの仕事づくりを目指すネパリ・バザーロで仕事ができることは何よりの喜びです。
 世の中は男性と女性で成り立っていますが、ネパールの場合、女性の立場は、男性のはるか後ろに押しやられていることを、カトマンズという都会に住む私ですら日々痛感します。女性の場所は家庭と台所に限られています。息子は何でも自分で決められるのに、娘は女友達との外出すら親の許可がいります。家事や下の子の面倒も見なければなりません。女性は、父親の、そして結婚すると夫の許可なしには、自分では何も決められません。ネパールは男性優位の社会で、家族の中で決定を下すのは男性です。女性も加わって決めた方が、男性だけで決めるよりずっとうまくいくでしょうに・・・。不公平、不平等の壁を壊すためには、女性の自立が必要です。女性が自立するには、技術を身に付け仕事を持つという経済的自立が大きく影響します。
 ネパリ・バザーロは、ネパール製品の調査や促進のため、ネパール各地に散らばる様々な生産者を訪ねています。昨年は私もそれに同行することができました。
 ミティラアートで有名なジャナカプールでは、様々な芸術品や手工芸品作りに励む女性たちに会うことができました。幼い子どもを連れて働いている女性もいます。村々も訪ね、厳しい暮らしを知りました。壁がなく雨風すらしのげない狭い小屋に何人もの家族が暮らしていました。簡素で着る服も貧しく、カトマンズを出たことがなかった私には初めて見る生活で、心を痛めました。しかし、暮らしがとてつもなく過酷な状況でも、彼らには暖かい笑顔があり、すばらしい技術がありました。彼らの笑顔を本当の笑顔にするために、しっかりと働かなければと感じました。
 東ネパールのフィディムにあるカンチャンジャンガ紅茶農園(KTE)へも行く機会があり、オーガニックの紅茶栽培と紅茶農園の労働者の状況を知りました。KTEは遠く離れた山間部にあります。村人、つまり農園労働者は、夜明け前に狭く滑りやすい山道を2時間かけて農園に行き、日が暮れて暗くなってからまた家に帰ります。労働者の生活向上を第一の信念とし、フェアトレードの精神で運営されているKTEですが、生活は一度に改善されるはずもなく、外部から移り住み、農繁期のみKTEで働く家族の収入は不安定です。KTEに来る前と比べれば黄金のようによい暮らしになったと語ってくれるものの、日常生活品すら充分になく、一家庭平均4名の子ども達を学校に行かせることもできません。ネパリ・バザーロは、この問題を理解し、労働者の子どもたちへの奨学金支援を決めました(P9参照)。この一歩は労働者のやる気を引き出すだけではなく、ネパールにすばらしい人材を育てることにも効果があります。教育を受けた子ども達は国の柱になるでしょう。
 私は、ネパリ・バザーロの仕事を通して、様々な経験を共有したいと思っています。ネパールは貧しい国ですが、すばらしい技術と資源があります。海外から多額の寄付をしていただいても、本当に助けを必要としている地方の人にはなかなか届きません。私たち自身が自分の国を良くし、自立を目指すために必要なのは、仕事作りです。ネパリ・バザーロは生産者を直接訪ね、様子を見て、状況に合わせた工夫をしています。それが、生産者を勇気づけ、やる気を高め、努力をすれば報われると実感させているのです。
 私も、お客様に最大の満足を感じてもらえる製品を作るためのアドバイスを、ネパールに戻ってから生産者の方たちに話すことができるよう、この研修を有意義なものにしようと思っています。フェアトレード精神を守り、満足できる製品を作り、そして、熱心に働く貧しい生産者の状況を改善するために頑張ります。


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