「フェアトレードに未来はあるか?」学習会報告

魚谷早苗/矢島万知子


今年のフェアトレード・デイは、5月4日でした。国際フェアトレード組織連盟IFATが働きかけて世界同時に行う史上初の出来事でした。日本では、5月をフェアトレード月間と定め、私達も、5月4日の映画鑑賞、5月26日の学習会、ディベート形式によるフェアトレードを考える企画を実施しました。宣伝をあまりしなかったにもかかわらず、多くの方に参加していただき、有意義な時間を過ごすことができました。

◆「フェアトレードに未来はあるか」を考えた経緯
 フェアトレードは、日本でも大分注目されるようになってきたようです。でも、欧米に比べるとまだまだです。もっと広く人々に知っていただきたいと思案している今年の3月に、フェアトレードを紹介するテレビ番組が企画されました。ちょうど、私達が公開セミナーを開く直前のことでした。代表の土屋春代が出演しましたが、その生番組で、司会者からダイレクトな最終結論としての質問がありました。
 「理論はいいけれど、本当に日本で理解され、広まるのか」
 メンバー、協力者にとって、その命題は良い勉強の機会にもなるので、学習会のテーマにしました。

◆ディベートは良いトレーニングの機会
 そこで、「未来がある」チームと「未来がない」チームに分かれて議論することで、フェアトレードの認識を深め、また、その課題を前向きに考え、活動に活かしていくことにしました。
 「未来がある」チームは責任重大。その「ある」チームは、日本で研修中だったジャリーナを含むスタッフ、ボランティアなど5名。心を鬼にして否定する役割の「ない」チームもスタッフや協力者6名。更に、フェアトレードに携わっている団体の方にも加わっていただきました。どちらのチームも事前の打合せに議論を重ねて当日を迎えました。

◆陪審員は「聴衆」役の学習会参加者
 チームメンバー以外の参加者23名は判定のための○×の札を持っての「聴衆」となりました。両チームが直前の打合せをしている間に「聴衆」に聞いたところでは、23名中20名が「日本でフェアトレードが広まる」と考えていました。
 さて、そんな聴衆を前に、ディベートの始まりです。まずは「ない」チームからその理由が述べられました。「未来がない」とする理由は、大きく分けて3つあげられました。 @値段が高い、A商品の質が悪い、B理念が分かりにくい。
 「ない」チームの「値段が高い」という意見に対し、「ある」チームは、公正な賃金を支払うためであり、価格を抑える努力はしていること、安さだけが全てではなく、健康・手作りのオリジナリティ・生産者の人権などの付加価値にお金を払う意識が日本でも増えていることを述べました。
 「商品の質」については、質向上のため、チェックや修理を行い、生産者へ改善点をフィードバックをしていること、フェアトレードという形で生産者が対等な関係で自信を持って作ることで、今後、更に質が向上すると語りました。

◆消費者意識が明日を創ることを実感
 こうした価格や品質の説明も消費者が理解してくれてこそ支持されるもの。「フェアトレードは分かりにくい」という「ない」チームの主張に対して、「ある」チームはニュースレターなどで情報を詳しく伝えていること、その人なりに理解度が違っても地道に理解者を増やしている、という意見が出されました。
 さて、間に作戦会議の休憩を挟んで40分の討議を終え、聴衆に判定をしていただきました。どちらのチームの意見が論理的で筋が通っていたか・・・結果は、残念ながら「ない」チームの優位となりました。
 終了後、限られた時間で伝えることの難しさ、短絡的な理解による一時的な「ブーム」はかえって危険なこと、その場限りの「お情け」と継続的な「共感」の違いなどが語られ、消費者意識を上げ、フェアトレードをしっかりと根づかせようと確認しあいました。

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