サンギータさんの奨学金と子どもたちの近況

魚谷早苗


今日は8月15日、カトマンズのホテルでこの原稿を書いています。ボランティアとしてネパリ・バザーロに関わっている私は、仕事の夏休みを利用してネパールを訪れ、9日間の滞在中に生産者の方たちや支援している子どもたちに会いました。
 ビシュヌさんとムナさんというネパール人ご夫妻が運営しているモーニングスター・チルドレンズ・ホームとは、ネパリ・バザーロ設立当時から、もう10年来の付き合いです。当時18名だった子どもの数は、51名に増えました。大きくなって、ホームを独立する子も出てきましたが、今回の訪問の一番の気がかりはこの春10年生を終えた4人の女の子たちの進路です。

◆SLC(全国共通テスト)の結果を待ちながら
ネパールでは10年生を終えるとSLCという全国共通テストを受け、その結果が進学や就職に大きく影響します。全国的には1-2割しか合格できない難しい試験で、ホームの4人も、一人は2級で合格したものの、2人は2科目を落として再試験を受け、結果待ち。一人は残念ながら不合格で、来年受けなおすそうです。 合格したビマリさんは看護婦になるために今週の土曜日にルンビニの近くの看護学校へ、泊りがけで入学試験を受けに行きます。追試の結果待ちの二人は、一人は看護婦、一人は教師になることを希望していて、どの子も無事に受かることを祈っています。
 沢山の子どもたちを育ててきたビシュヌさんですが、大きくなった子どもたちが将来はビシュヌさんのような生き方をしたいといって、ホームを手伝ってくれるのが、何よりの喜びなのだそうです。

◆ホームから自立したアルジュン君の生活の様子
 ホームから自立したアルジュン君、レベッカさんの兄妹ともネパールに来るたびに会っています。アルジュンさんは4年ほど前から出版関係の仕事に就き、小さな部屋を借りて暮らし、ホームで10年生を終えた妹を引きとって一緒に暮らしています。20歳過ぎの若者が、少ない給料で二人の生活をまかなうのは大変です。助け合ってがんばる二人がスキルアップできるよう、学費支援をしています。
 アルジュンさんは毎朝6時から9時半まで大学のモーニングコースに通い、休むまもなく10時から5時は職場へ行きます。レベッカさんもカレッジ(日本の高2、3年生にあたる)で商業を学んでいます。もうすぐ大学で試験が始まるので、試験勉強にも忙しいアルジュン君でした。

◆新たな奨学金の開始
 今年から新しい奨学金も始めました。この10年、ネパリ・バザーロが木彫りスタンプをオーダーしてきたシディマンさんの娘、サンギータさんの学費支援がその一つです。彼女は成績優秀で、家族を助けるためにしっかりした職に就きたいと進学を望んでいましたが、家の経済状態から諦めかけていました。SLCを1級でパスした彼女の未来を応援し、看護学校の学費を支援することにしました。彼女が希望する公立看護学校の入試は冬ですので、現在彼女は看護予備校に通い、カレッジやコンピュータースクールにも通っています。 カレッジは、入試の成績が優秀でしたので学費免除です。毎朝6時〜10時まで看護予備校で保健科学や生物学、化学などを学び、そのあと10時から4時まではカレッジ。5時から7時までコンピューターを習い、家に帰ってから8時から10時までは予習や復習をするという猛勉強ぶりです。予備校やカレッジを案内してもらいましたが、ほんの15分という道のりが実際はかなり遠く、毎日この道を歩いて通っているのかと驚きました。カレッジの図書館で本を借りて持ち帰り、家での勉強に役立てているそうです。
 遠く離れた東ネパールの紅茶農園KTEでの奨学金も始まり、子どもたちが学校に通い始めました。KTEではこれまでも独自に1家庭1人までの奨学金支援はしてきましたが、その資金不足を補い、すべての子どもが学校にいけるよう援助をスタートしました。これには、神奈川県立総合高校の生徒たちも、コンサートを開いて資金を集め、協力してくれています。この春から140名以上の子どもたちが新たに学校に通い始め、現在、子どもたちの背景や将来の希望などを調査したプロフィールを作成中です。

◆10年の活動を思う
 この10年、様々な形で子ども達の教育に関わり、私たちも多くを学んできました。これからも、子ども達本人、子ども達を見守るネパールの方たち、支援活動を支える日本のメンバーで、情報や意見を交換し合い、協力しあっていきたいと思います。

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