フェアトレードで創る安全な社会
「スパイスの効用と働く女性たち」
魚谷早苗

 2月23日(日)、地球市民かながわプラザにてネパリ・バザーロ主催の公開セミナーが催されました。今回はマサラセットを生産するスパイシー・ホーム・スパイシーズ(SHS)代表のシターラ・ラジバンダリさんをお迎えし、起業の経緯とそこで働く女性たちの状況をお聞きしました。
 
 ネパールでも、女性の教育は重要視されていますが、卒業後外で働くことは好まれず、私自身もすぐに見合い結婚をしました。けれど、子どもが手を離れるようになるとあちこち具合が悪くなってきて、夫に外に出たほうがいいと言われました。そこで、ビジネス推進プロジェクトのトレーニングを受けようと夫に相談すると、賛成してくれましたが、手続きは自分でするように言われました。ずっと家にしかいなかったので、まるで無学の女性のように、申請書1枚書くのもドキドキし、面接でもすっかりあがってしまって何を言ったのかも覚えていませんでした。とてもダメだと落ち込んでいると夫が大丈夫と励ましてくれました。
 無事選考に合格し、トレーニングを受け、自分に自信が持てるようになり、起業家への第一歩を踏み出しました。
 まず私はセーターの生産を手がけました。5kgの毛糸を買い二人の編み手に仕事を頼みましたが、品質が不十分と気づき、品質向上の訓練を受けました。しかし、できあがったセーターはデザインが流行おくれで、毛糸代にもならず、マーケティングの必要性を実感しました。少しずつセーターが売れるようになり、海外への輸出もし始めた頃、WEAN(女性起業家協会)を知りました。WEANには経験豊かな女性が集まっていますが、皆が同じ悩みを抱えていることを知り、解決方法もお互いに相談しました。そして、セミナーやトレーニング、イベントにも参加して、自信をつけていきました。
 9年間セーターを作ってきましたが、セーター自体の需要が減り、仕事を変える必要を感じ1999年に現在のSHSを始めました。スパイスはたくさんの業者が乱立し、インドには巨大資本の会社もありますから簡単ではありませんが、安いけれど質の悪いスパイスではなく、良質のスパイスを販売しようと思ったのです。始めてすぐに幸運にもネパリ・バザーロに出会いました。小袋の包装、パッケージスタイルなど初めてのことばかりで、生産にどれくらいの時間がかかるのかも分からず、家族全員で夜通しで袋詰めをしたものです。
 私の一番の目的は女性の仕事創りです。現在10名の女性を雇用しています。どの女性も厳しい家庭の出身です。ネパリ・バザーロが継続的に仕事を発注してくれるおかげで、彼女達を正規に雇用することができ、安心して働いてもらえます。最初に働き始めたアニタさんは、今はみんなのまとめ役です。父親が早くに他界し、母親が洗濯の仕事をしながら細々と暮らしてきました。アニタさんは、10年生まで教育を受け、SLC(高校修了検定試験)にも合格しましたが、卒業後に親孝行しようと仕事を探しても見つかりませんでした。私は真っ先に彼女を雇い、今は大学にも進学し、家計を支え、村の女の子に学費支援もしています。ヒラソバさんもSLCはトップクラスでしたが経済的理由で進学できませんでした。SHSで働き始めてから進学しました。起業したことは私自身の自信とやる気を促すと共に、働く女性たちにも希望を与えたのです。
 今日このセミナーの場で「起業家」として紹介されたことを誇りに思います。普通ネパールでは、女性は男性の娘や妻として紹介されるだけです。ネパールの女性も仕事をして、アイデンティティを築くべきです。今後もより多くの女性に仕事の機会を創っていきたいと思っています。

 今回、シターラさんは夫のアチュトさんと共に来日しました。生まれて初めての講演に緊張しながらも、誠実にしっかりと語るシタ-ラさんを、アチュトさんは温かく、そして誇らしげに見守っていました。札幌、静岡でもセミナーを開いたり、東京、厚木近郊のお店訪問から北海道の小樽での工場見学など、実際の現場をみることができ、多くの経験を積んで帰国しました。日本での様々な経験を夫婦で共有したことは、今後のネパールでの活動にも、きっと生かされることでしょう。