Monthly Archives: 6月 2011

ベルダショップ・レポート (vol.34)

Verdaの誌面がそのままお店になりました。


東京・尾山台の隠れ家で、2日間限定のベルダショップをオープンしました。

 2010年10月10日、11日の2日間、東京都世田谷区にある「アトリエS」に、たくさんのネパリ・バザーロの商品をご用意し、いつも応援してくださっているお客様をお招きしました。自由ヶ丘に近い住宅街にある「アトリエS」はLa MOMOの写真スタジオで、カタログVerdaの撮影に使われています。
 前日からの激しい雨は当日になっても降り続き心配しましたが、開店の頃には不思議と止んで、お客様をお迎えすることができました。緑の芝の庭には雑貨やニット小物、そして、天井の高い1階のホールには秋冬物を中心に布やニットの服を色系別にディスプレイしました。らせん階段を上った2階には紙布の部屋。ネパリのコーヒー、紅茶とお菓子で一休みできるカフェと、カタログの雰囲気そのままにプロのカメラマンが撮影をする企画も大好評でした。
 お友達やご家族と連れ立っておいで下さった方も多く、2日間で252名のご来場となりました。レジやカフェが混雑してご迷惑をおかけしてしまった時間帯もありましたが、たくさんの方に楽しんでいただき、これまでお手紙だけのやりとりだった通販のお客様とも初めてお会いでき、スタッフにとっても嬉しいひとときでした。

フェアトレードのお店紹介 (vol.34)

●埼玉県

草木からの無限の贈り物一枚の布を染め上げる
工房艸(そう)

古き良き大正時代を思わせる大正浪漫通りを歩いていると、風になびいている、自然のやさしい色合いのスカーフが目に入ります。「工房艸」の店主の原澤博子さんが自宅で育てた藍の生葉で染めた淡い水色に、さらに柿渋を何度も染め重ねた美しい色合いのスカーフが、お日様の光と共に少しずつ、少しずつ、色を深めています。
 店内は、心の琴線に触れる素晴らしい色の宝庫。惚れ込んだ作家の服や自身で染めたスカーフ、ネパリの衣類やアイピローが並んでいます。「これは5年もの。これは8年ものよ」と、原澤さんが、一つひとつ我が子のように手にとって教えてくれます。染めては寝かし、染めては寝かし、何年もかけて少しずつ色を重ねていくのだそうです。ネパリの服にも柿渋を染め重ねたり、挿し色のストールをセットにしたりして紹介しています。一枚の服を大切に、長く楽しんで着て頂きたいので、染め替えもしています。ネパリも染め替えやリメイクをしているので、その物作りの姿勢に共感しています。以前70代の方が、「レース織ハイウエストギャザーブラウス・青緑」を購入され、1年目はそのまま着て、2年目は茜と柿渋でまだらに染め重ね、3年目は無地にしてとリクエストをされたそうです。一枚の服が、「工房艸」を通して、お客様や原澤さんと共に生きています。「自然の力はすごいと気付かされます。手間はかかりますが、モノが使い手と共に変化し、素敵な物語を作っていきます。最近は安い商品が溢れていますが、モノの後ろにあるストーリー『タグエピソード』を大切にして、伝えていきたいです」と語る原澤さんは、毎朝5時から、冬でも7時から、自宅で染めの仕事をスタートします。その後、店に出て接客をしながら布を織っています。長年幼稚園の先生として働いていましたが、定年を目前に退職後、チャレンジドショップへの応募をきっかけに、お店を開くことになりました。フェアトレードのことは以前から知っていて、行商のように商品をバザーなどで販売していました。何か突き動かされる想いがあり、日本全国、海外からも旅行者が訪れる川越で、7年前に草木染めのお店を始めるときも、ぜひフェアトレードのことを多くの人に伝えたいという想いで商品を置くことにしました。
 「布を草木で染め、身につけること。そこには先人の知恵に依る深い意味がありました」と原澤さんは穏やかに語ります。店内は自然の美しい色に囲まれて、とても温かい空間です。
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店主:原澤博子
〒350-0006 埼玉県川越市連雀町16-8
Tel&Fax:049-225-5358
Open:11:00~18:00(定休日:月・金曜)
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●埼玉県
時おり不思議空間に変貌する喫茶店
ほっとスペース包(ぱお)

「ほっとスペース包」は、新座市の住宅街で運営しているコミュニティスペースです。取材に訪れた日、店内はネパリのコーヒーを淹れる柔らかな香りに満ち、たくさんの人で賑わっていました。
 代表の泉山由紀さんは以前、近くの堀ノ内病院で16年間に渡って、障がいのある人と健常者が一緒に働く売店を共同運営していました。病院の事情でその売店を閉めることになったとき、そうした障がいのある人と健常者が共に関わる場を地域に作ろうと、有志20名ほどで約一年半の準備期間を経てオープンさせました。泉山さんは新座を「自分と周囲のつながりが見えている地域」だと言います。それを活かして新座市に住む様々な人々が集い楽しい時間を共有することのできる場作りをしています。
 「名前は代表ですけど、みんなのお店ですし、みんなの場所なんです」オープンから約5年間、30人近い登録メンバーがボランティアで維持してきました。笑い声が溢れる店内に集う方々はほとんどが顔見知り。障がいの有無に関わらず、地域の人たちにも参加してもらおうとアイディアを出し合い企画しています。
 「フェアトレード製品を置くことで、地域に住む健常者と障がい者という枠を越えて、世界の誰かとつながれるように感じています」と話す泉山さん。「ネパリの商品は、フェアトレード製品を扱おうと考えたときに真っ先に思いつきました。自分がネパリの商品をプレゼントでもらったときの温もりがとても心に残っていたんです。リスのキャンドルと手編みのミトン。贈ってくれた友人の気持ちがそのまま形になっていたようでした」自由に活動できるように補助金や助成金には頼らず、ネパリを始めとしたフェアトレード商品や、地域の方々の手作り品を販売して得た収益がスペースの運営に充てられています。「ほっとスペース包」は、新座に住む人が繋がり、助け合う、自立したコミュニティ作りを目指しています。
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代表:泉山由紀
〒352-0033 埼玉県新座市石神2-4-8石神マーケット1F
Tel&Fax:048-483-2280
Open:10:30~17:00(定休日:日曜、祝日)
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●茨城県
人ともの、人と人とのつながりが楽しみ
フレンズ

東京・秋葉原から「つくばエクスプレス」でわずか45分。筑波大学キャンパスから約5分のところに「フレンズ」はあります。緑が多く、静かで気持ちのよい街並みです。
 「ゆっくり、ゆっくり」という気持ちを込めた、かたつむりの看板が入り口の目印。階段を上がると、衣類、雑貨、アクセサリー、食品、生活雑貨、ベビー用品などたくさんの商品が並ぶ店内が目に入り、心が躍ります。焦る気持ちを抑えつつ、靴を脱いで上がると、そこはまるで宝探しのような素敵な空間です。ショートヘアに大振りのアクセサリーとラップパンツがよくお似合いの店主、関口友美さんとお客様の楽しそうな会話にも耳を奪われます。商品を手にして、友美さんから溢れるように言葉が出てきます。使い方、着こなし方、作っている人のこと…聞いていると、モノがより一層キラキラと輝いて見えてきます。
 友美さんがお店を始められたのは5年前。それまで飲食店を営んでいたのですが、ある時ふと思い立ち、約2ヶ月で開店に至りました。「今が一番幸せ!ネパリの商品は、箱を開けるのが楽しくって!手書きのメッセージと共に届く商品たちは、一つひとつ大切に扱われていることが伝わってきます」と楽しそうに語ります。筑波大学の環境サークル「エコレンジャー」で活動し、卒業後もお店に来ている市橋あいさん、加倉井佑一さん、山浦愛さんをはじめ、想いある若者がお店に集います。「ここに来ると誰かに会えたり、話ができて楽しいです」と語るあいさん。買い物を楽しむだけでなく、お客様に商品の説明をしたり、友美さんとの会話に励まされたりと、生き方を模索する学生たちにとっても大切な場になっているようです。
 「これからの未来を担っていく学生たちに、フェアトレードを『広めること』が友美さんの使命」と、夫のひろしさん(紙布の服を愛用しています)はいつも応援してくれています。昨今の「フェアトレード」の広まり方に疑問を感じることもある中で、ネパリの「最後の一枚まで大切に売り切る」という姿勢は、友美さんの心の支えになっているそうです。
 商品を通して、私たち一人ひとりがつながること。そこから全てが始まると感じるお店です。
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店主:関口友美
〒305-0005 茨城県つくば市天久保1-6-1ヤマキビル2階(松見公園前)
Tel&Fax:029-852-1700
Open:12:00~17:00(定休日:日・月曜、祝日)
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●埼玉県
人の手が作りだすぬくもりを伝えるお店
おばあちゃんの店

東武東上線柳瀬川駅から徒歩10分。静かな住宅街に佇む「おばあちゃんの店」に足を踏み入れると、明るい笑顔が印象的な店主の田中香代子さんが出迎えてくれます。
 田中さんは20代の頃、青年海外協力隊員としてセネガルに二年ほど赴任。多額の予算が注ぎ込まれるプロジェクトは数多く立案されるものの、成果が見えない現地の状況に矛盾を感じ、もっと着実な方法で社会に貢献できないかと考えるようになりました。帰国後、西アフリカ諸国の貧困と家族の病気の経験から、「食べること」「自分たちで作ること」の大切さを実感し、身近な生活を少しずつ変えていくことから始めようと2003年「おばあちゃんの店」をオープン。ユニークな店名は祖母が以前営んでいた駄菓子屋のような、地域に密着した店にしたいと考えたからだそうです。店内には新鮮な有機野菜が並び、加工食品、発酵食品などの自然食品や、地球と人に優しい洗剤や天然原料の化粧品などの生活用品、天然素材のフェアトレード商品を多数取り扱っています。
 きちんとしたものを食べるということは、食べる人の身体だけでなく、心も育むとても大切なこと。様々な物が溢れる世の中で「せめてこのお店の物はお客様の心身の健康にとって自信をもって良いといえるものを置いておきたい」と考える田中さん。
 そんな思いのこもったこだわりの商品の中にネパリ・バザーロの食品や衣類も置かれています。「ネパリの商品には手仕事の良さを感じて仕入れています。手仕事が社会や生活から失われている今、多くの人の手を経て作られた洋服の着心地の良さをとおしてその大切さを知って欲しい」ネパリの柿渋の洋服を何度も染めて着てもらおうと柿渋の染料も揃えています。
 住宅街を歩いているとふらりと立ち寄りたくなるような明るい佇まいの「おばあちゃんの店」そこに置いてある商品の良さを通して、心と身体に何が大切かを体感できるはずです。
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店主:田中香代子 〒353-0005 埼玉県志木市幸町3-23-10
Tel&Fax:048-476-4855
Open:10:00〜18:00(定休日:土曜)
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●埼玉県
天然素材&フェアトレードの雑貨・衣料
to-9(トーク)

 JR武蔵野線南越谷駅または東武伊勢崎線新越谷駅から徒歩3分。大型スーパーに近い商店街に「to-9」があります。通りの可愛い看板にひかれて階段を上ると、佐藤奈穂子さん手作りのアクセサリーやフェルト小物がお出迎え。大きな窓から柔らかな日が差し込む一角には、佐藤耕輔さんお気に入りの多肉植物の可愛い鉢植えが並びます。ゆったりとしたスペースの真ん中に置かれた水槽では、大きな金魚がゆらゆらと泳ぎ、取り囲むように衣類、雑貨、食品が並んでいます。
 奈穂子さん、耕輔さんご夫妻は、2005年にそれぞれ仕事を退職して1年間のアジアの旅に出ました。出会った人たちから「日本人でラッキーだ。自分たちには外国の旅なんてできない」と屈託のない笑顔で言われ、「日本人であること」を意識させられました。旅が終わりに近づき、これからもアジアとつながり、少しでも役に立ちたいと考えた末、アジアの雑貨を販売しようと、帰国後準備を重ね、2008年5月に店をオープンしました。
 フェアトレード商品との出会いは、ネパリが最初でした。ネパールを旅した時に土産物屋で見た雑貨をそのままで日本で販売することは難しいと感じましたが、ネパリは、ネパールと日本それぞれの良さを引き出していると感じています。ずっとネパリの紅茶を愛飲していますが、時々他の紅茶を飲むと「やっぱりネパリの紅茶がおいしい」と再認識するそうです。お店では、クッキーやサヌ・バイさんのスプーンも人気です。
 仕入れる商品は、できるだけフェアトレードのものをと心がけています。「この店がなくなったら生産者の仕事が減ってしまう。自分たちの店がネパリや生産者と直接つながっているのだと思うと、やる気が湧いてきます(奈穂子さん)」「より安いものを選ぶ時代ですが、想いを共感できる人はまだまだ増えていくと思います(耕輔さん)」フェアトレード商品を置くようになって、お客様との輪が広がりリピーターも増え、お二人の想いはさらに強くなりました。
 お友達へのプレゼント、自分へのご褒美を探しに、ぜひお店を訪ねてみてください。
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店主:佐藤耕輔、佐藤奈穂子
埼玉県越谷市南越谷1-13-8 大菊ビル2階
Tel&Fax:048-986-7990 Open:11:00~19:30(定休:水曜)
http://to-9.ocnk.net
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●埼玉県
昔ながらの食材とフェアトレードのお店
かぎろひ

JR宇都宮線東大宮駅近くにある「かぎろひ」はこだわりの食材を中心に、フェアトレードの雑貨などが並ぶぬくもりのあるお店です。店主の萩原和人さんは、もともとはコックをしていました。自然食品店で働く妻のやす子さんから話を聞き、自分たちの食卓に並ぶようになると、自分が仕事で使っている化学調味料や着色料の入った食材が気になり始めました。知ってしまったからには、自分にも、周りの人にも嘘をつきたくない、と思っていた矢先、その自然食品店からお声がかかり、妻にも勧められて転職しました。
その店で、一緒に働くスタッフからフェアトレードの話を聞きました。当たり前のことなのに、世の中では違う考え方の方が主流であることに気づき、もっと広めたいとフェアトレード商品を扱うことにしました。
ほどなくして働いていたお店が閉じられることになり、次の仕事をどうしようかと考えていたときに、お客様から「閉められては困る。あなたがやって」と請われ、すぐ近くの今の店舗で独立して「かぎろひ」を開店しました。
自分のお店になり、以前から気になっていたネパリの商品も置けるようになりました。ネパリは、ネパールに限定してこれだけ品質の良い商品をそろえ、素晴らしいカタログを出していて驚かされます。
国対国でなくても、国内にもアンフェアはあります。生鮮品や小物はできるだけ直接仕入れるように心がけています。農家さんから話を聞くと、大手企業との付き合いの大変さが伝わってきます。国外、国内に関係なく、当たり前のことが当たり前に通る世の中になって欲しいと願っています。
「フェアトレードや農業の実情を知ること、学ぶことも大切ですが、買うより前に、まず自分で作ってみることを勧めています。体験してみれば実感として理解ができます。自分で苦労して作ったものは納得のいく対価が欲しいし、どうして店でこんなに安く売っているのかと疑問に感じ、搾取する気にはなれないはずです」と語る萩原さんは、野菜の種を販売したり、空いている畑があると紹介もしているそうです。
毎年夏には、「ジリミリ」というイベントを開催しています。自分が知り合った同じ想いを共有するお店や農家さんが一つの輪になって地域を盛り上げています。
イベントの開催や近隣のすてきなお店の情報も満載で、地域のつながりを感じるすてきなお店です。
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店主:萩原和人
〒337-0051埼玉県さいたま市見沼区東大宮5-33-6
TEL/FAX:048-686-8838 Open:10:00〜19:00 
(定休:月曜 ※お盆・正月・GWにも定休日有り)
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商品開発物語:こぶたとねずみのリストピロー (vol.34)

キーボードを打つ時に手首を置くだけでなく、疲れた肩にのせたりも。中に入っている天然素材、亜麻の種のちょうどいい重みで、疲れがじわーっと和らぎ、癖になる気持ちよさ。表情も一つひとつ違います。

マハグティを訪れる各国のバイヤーから注目され、今やネパールから世界に羽ばたいている大人気のアイピロー、ポチとタマ(84頁)。ネパリ・バザーロが開発したデザインが気に入られ、欧米からは、ドアストッパーとして巨大サイズの発注も来ているほどです。抱き枕かと思うようなポチとタマを、数人がかりで作っています。昨今の経済不況の中でも、マハグティが何とか仕事を確保し、工房を続けられているのも、アイピローのおかげだそうです。
 マハグティのスタッフも頑張っています。「私たち自身で新商品を開発しましょう!」新しいことをしていれば、きっと結果はついてくるはず。取り組むスタッフも、モチベーションが高まります。
 それから、訪ねる度にポチとタマからヒントを得た新しい商品を見せてくれました。カエルやくまのアイピロー、うさぎやカバのマスコット…そんな中、パッと目に飛び込んできたのが、『こぶたとねずみのリストピロー』。愛嬌のある顔つき、手の平サイズの心地よい重み、保多織りのシャリシャリッとした肌触り。手の平の上で、今にもモソモソと動き出しそうです。
 「これはかわいい!これでいきましょう!」
商品化することを決めると、マハグティのスタッフも嬉しそう。サイズなど、仕様の微調整を伝えて、その都度サンプルを作ってもらいました。このようなやりとりを何回か経て、ようやく完成しました。
 カタログ掲載後、お客様からも、「こういう商品を待っていました」と嬉しいお声を頂きました。ネパリ・バザーロの事務所から、お客様の元へ次々と旅立っていきます。マハグティのスタッフと共に、これからも大事に商品を育てていきたいと思います。

1.「もったいない」から生まれた
服を作る過程で、どうしても出てしまう「はぎれ」。ネパールの方々が糸を紡ぎ、手織りし、手染めした布は、もったいなくて捨てられません。ネパリ・バザーロは、はぎれを活かした商品開発を大切にしています。このリストピローもはぎれを使っています。同じ布で服を作っているので、リストピローとお揃いになることも!そんな日は、デスクの上のリストピローと共に、一日嬉しい気持ちで過ごせます。

2.欧米にも人気の保多織り
リストピローに使っているのは「保多織り」という手織り綿です。2004年、2005年と日本の染織作家の方をネパールにお連れして、技術指導をして頂いた時に生まれた布です。「多年を保つ」ことに由来する名前の通り、いつまでも丈夫で長持ちすることが特長です。吸湿性と保温性に優れていて、凹凸のあるシャリ感が心地よい布地です。この布地も欧米に大人気で、各国から注文が入り、マハグティの財産となっているようです。

3.新しい挑戦
マハグティはマスコットなどの商品デザインだけでなく、新素材の開発にも積極的です。今回新登場の「竹布」(P14、42)もその一つです。この竹布は、シルクのようなサラッとした肌触りが気持ちよく、マハグティのスタッフにも大人気でした。

福祉プログラムレポート (vol.34)

 サポート会員の方々の会費を中心に、応援してくださる方からの寄付などを加えて、ネパリ・バザーロは子どもたちの教育支援、女性たちの自立支援を行ってきました。ホームの子どもたちへの支援は20年、セービングファンドも開始から4年が経ちました。継続的に行っている支援についてご紹介します。(文:土屋春代)


◇セービングファンド
 将来に備えた財形貯蓄システム。ワーカー本人と職場、ネパリの3者が、一定額をワーカー名義の口座に毎月積立てます。入院、手術、子どもの教育費などまとまったお金の必要な時以外は使えません。

 地方から届いたスパイスを洗浄、加工、パッキングして私たちのところに届けてくれるのはSHS(スパイシー・ホーム・スパイシーズ)の皆さんです。セービングファンドを一番早く開始したところです。5年期限でスタートし、ずっと勤続しているマヤさん、サラスワティさん、チャイトマヤさん、サーノマヤさんたちは今年とうとう5年目を迎えました。ファンドが喜びや励みとなり、仕事にもよい影響を及ぼしていることはシターラさんから聞いてはいましたが、皆はこのファンドをどう思っているのでしょうか。

 ある時、代表のシターラさんがうれしそうに「食事に招待したいから都合のよい日を聞いてくれとマヤさんたちに頼まれたの」と、言いました。シターラさんの手料理はよくご馳走になりますが、今回はワーカーの皆が手料理を振舞ってくれるというのです。それぞれの自宅は離れていて、遠くから通っている人もいるので、シターラさんのキッチンで皆の得意料理をつくりたいと提案があったそうです。
約束の日、時間に伺うと、まだ忙しそうに調理している最中でした。マネージャーで普段は皆を仕切っているマヤさんは家で料理をしないためか、この日はサラスワティさんたちの指示を受けて、皿を取りにいったり、並べたり走り回っていました。私と目が合うと照れたように微笑みました。シターラさんだけでなく夫のアチュトゥさん、娘のアルチャナさん、アンギラさんも招待を受けたゲストなのだそうで、私たちと一緒にイスに座って供されるのを待っている間、初めてのことにうれしくてたまらないという様子でした。作る人も待つ人も、誰もが楽しそうに、普段と違った役割を味わっていました。やがて、並んだ料理を見た時はその種類の多さと初めて見る料理の数々に驚きました。そして、どの料理もほんとうにおいしく、料理自慢のシターラさんも舌を巻くほどの皆の腕前に脱帽でした。

 最後にマヤさんが皆を代表して感謝の言葉を贈ってくれました。でも、どんな感謝の言葉も及ばぬほど、この日の心のこもったおもてなしは皆の気持ちを雄弁に語ってくれていました。仕事を誇りに思い、セービングファンドを将来の拠り所と思っていることが伝わってきました。5年以降のことをシターラさんも含めて話し合いますが、きっとファンドは少し変更しつつも継続することになるでしょう。どのように継続するのか、皆の意見を聞くのがとても楽しみです。

レトルトカレー、カレークラッカーのご紹介 (vol.34)

ネパリのスパイスを使ったおいしいカレーとお菓子のご紹介です~

スパイスと野菜のおいしさがぎゅっと詰まった
レトルトカレー

ネパリのスパイスの調合に手を加えず、地元で採れた野菜をふんだんに使って作られているので、動物性の材料不使用でもコクと旨味がたっぷりのレトルトカレーです。障がい者施設で一つひとつ丁寧に作られるので大量生産はできません。手軽に味わえる贅沢をお愉しみください。
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珈琲工場&百屋
「珈琲工場&百屋」は、ハンディキャップのある人々と一緒に世界各地の厳選されたコーヒー、オーガニックやフェアトレードの商品を販売促進しています。2010年、レトルトカレーを作ることができる障がい者施設との出会いがあり、スタッフの皆さんがネパリのスパイスのファンだということもあって、ネパリのスパイスでカレーを作ることになりました。多くの人に仕事が行き渡ることは珈琲工場&百屋の願いです。
〒241-0005 神奈川県横浜市旭区白根5-14-1 Tel:045-954-5888 Fax:045-954-5777
Open:9:30~18:30(日曜日は10:00~18:00)年中無休
HP:http://homepage2.nifty.com/coffee-hyakuya/
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スパイシーな食事感覚のクラッカー
カレークラッカー

おいしいカレーがいつでもどこでも手軽に食べられるお菓子になりました。風味豊かなスパイスと塩味が効いた、食べごたえのある、食事感覚のクラッカーです。カレークラッカーにスープとサラダで、立派なランチに。ビールやワインのおつまみにもおすすめ。全て、こだわりの原料を使っています。
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森のカフェレストラン 灯鳥
大自然の中、地元で採れたこだわりの素材を使って、心を込めて作られた料理をゆったりと愉しめる場所、「森のカフェレストラン 灯鳥」。ネパリのスパイスと野菜のハーモニーが絶妙なカレーももちろんあります!
〒408-0315 山梨県北杜市白州町白須8056 白州・尾白の森名水公園べるが内
Tel&Fax:0551-35-3146 Open:10:00~18:00/夏期は10:00~21:00
定休:水曜日(夏期は無休)
HP:http://potori.net/
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特集:地域開発 【コラム】ワイルドサーグとコーラ (vol.34)

 ネパール語で青菜のことを「サーグ」と言います。KTEの宿舎の料理担当、パルシュラムさんがある日のランチに「ワイルドサーグですよ!これはおいしいですよ!」と、うれしそうに青菜炒めを出してくれました。「本当だ!ものすごくおいしい!」ディリーさん(*1)と私はパクパク。しかし、農園の健康的な食事がなぜか合わない完二さんはほんの少ししか口にしませんでした。
 
 食後、奨学生2人にインタビューしている間、強烈な睡魔に襲われ、足許はふらつき、ろれつは回らず。静かだったディリーさんも、実はものすごく眠かったことが、夕食の時に判明。あのおいしかった青菜に毒草(薬草?)が混ざっていたのかと笑い話になりました。KTE周辺はアーユルヴェーダの薬草の宝庫だそうです。使い方によって怪我を治したり、病いを癒したり、健康な生活の支えとなるでしょう。フェーズ1(*2)の自立計画の中にも、アーユルヴェーダクリニックの構想があります。

 ワイルドサーグをほとんど食べず、ひとり何ともなく「何事も節制が肝心!」と威張っていた完二さんは、農園のベジタリアン生活になじめず食が細くなるばかり。心配したディリーさんの配慮で、とうとうインスタントヌードルを作ってもらうことになりました。パルシュラムさんはインスタント食品が初めてで「ナヤアイテムバエコレ…(作ったことがないからどうしよう:意訳)」と、かなり緊張していました。最初は失敗。あまりに塩辛いのでお湯で薄めていただきましたが、翌朝にはとてもおいしいヌードルとチャーハンができていました。「おいしい! おいしい!」と完二さんは何度もお代わりしていました。化学物質に汚染された食生活がバレバレ。

 かくいう私も、ネパールの地方に行くとなぜかコーラを飲みたくなり、一番近い街、フィディムバザールまで、完二さんと往復1時間の山道を歩いて飲みに行きました。1本の生ぬるいコーラを2人で分け合い、かなり高い値段を払わされ…とほほ。
(文:土屋春代 ネパリ・バザーロ代表)

*1…KTEの役員。カトマンズ事務所とフィディムの農園を頻繁に行き来し、企画立案や調整を精力的にこなす。55歳の彼は、後20年は仕事にその身を捧げ、引退後は瞑想生活に入ると言う。
*2…KTEの子どもたち全てが10年生までの基礎教育を受けられるようにと、ネパリとKTEが始めた奨学金支援制度。

特集:地域開発 スパイスに賭ける (vol.34)

 スパイス栽培地の人々の生活向上に向けて、調査と話し合いのため、前回訪問から約1ケ月後の2010年11月17日、再び東ネパールのエベレスト山麓、フィディムの村を訪れました。例年の乾季の晴れ渡った空とは違って曇り空。しかも、前日まで降り続いた雨で、舗装されていない道路は深くえぐられた轍ができて、大きな車輪のジープかトラックでなければ通れない状態でした。ネパールでは、10月から11月にかけてダサイン、ティハールという大きなお祭りが続き、多くの人が帰省する時期で、乾季で天気も良いのが普通でした。しかし、ここ数年は雨季の開始が遅くなり、その分、終わっているはずの時期にいつまでも雨が降り続き、地滑りも多発しています。
 気候変動の影響はそこかしこに現れています。この地域の名産、世界一の輸出量を誇るカルダモンは収穫が激減したため価格が高騰し、例年の8倍の値をつけていました。フィディムは、美味しいオレンジが採れる地域でもありますが、従来の土地では収穫が減り、より適した場所を早急に探さねばならない、と農民の方々が訴えていました。先祖代々の栽培ノウハウだけでは対応しきれなくなった環境変化を肌で感じ、懸命に工夫をしていますが、特に遠隔地では、残念ながらその努力が農民の生活向上に直結してはいません。しかし、どれほど環境が変化しても、努力が報われなくとも人々は生き抜いていかねばなりません。今回は、やっと緒に就いたスパイスの取組みの様子をお伝えします。(文:丑久保完二 ネパリ・バザーロ副代表)

ネパールの有機農業への取組み

 私たち、ネパリ・バザーロ(以下、ネパリ)は、農産物の取引に関わるようになった初めの頃から、西はコーヒー、東は紅茶と定め、農薬使用が広まりつつあった状況の中で、作る人にとっても、食べる人にとっても安全で安心できる農法を追及しようと、有機農業を進めてきました。
 当時、東ネパールのカンチャンジャンガ紅茶農園(以下、KTE)がネパールで唯一、国際標準の有機認証を受けていました。そこで、栽培支援をしていた西ネパールのグルミ、アルガカンチの将来のためにコーヒーでも有機認証を得ようと決意しました。ところが、オーガニックという概念がまだ一般的ではなく、農薬も化学肥料も使用したことのない農民たちはわざわざ証明を取る必要性を理解せず、1998年、オーストラリアから検査官を招いて現地に伴った際、「ここなら直ぐに認証は取れる。早く申請しなさい」と奨められたにもかかわらず、いつまでも書類作成に協力しようとしませんでした。何度も現地に通い、説得を重ねて準備を進め、ようやく2006年、ネパール初のコーヒーでの有機証明取得に至りました。そして、その過程で知り合った農業専門家の方々と協力しながら、東と西の拠点を中心に、ネパールにおける有機農業の情報発信の役割を担ってきました。
 こうして培った知識や技術、ネットワークを動員し、スパイスも有機農業で進めてきました。最近は、ネパールで最も紅茶生産の盛んなイラムでも有機農法の導入が増えつつあります。コーヒーは、国を挙げて、全てを有機農業に切り替える段階まで近づいています。

スパイスの有機栽培への取組み

 私たちのスパイス生産者の一部が住む東ネパールの村々は、首都カトマンズから飛行機で小1時間、そこから北へ車で8時間ほど行ったパンチタール郡にあります。中心となる町はフィディムです。そのフィディムから更に各方向に車で数時間離れた農家の人々が、10世帯から50世帯前後のグループや協同組合を作って、それぞれの土地に適したスパイスの栽培をしています。この地域に住む人々の多くはリンブーという民族で、自然を神として崇め、先祖代々の土地を最良の状態で守っていくという意識が高く、そのための研究や挑戦にとても熱心です。基本的に先人の教えに沿った農法を引き継いでいますが、なかには農薬を使って生産量を一時的に伸ばしたものの土地が荒れ、その反省から有機農法に転換した生産者もいます。栽培技術などの情報や品質管理、流通の中心になるのはKTEです。
 KTEが紅茶だけでなく、スパイス、ハーブまで扱うに至った背景には、ネパリの存在があります。2001年、ネパリがKTEの紅茶の販売を開始して数年後、後発としては何か特徴のある製品を出す必要を感じ、マサラティーを企画しました。ところが、ダージリンティーと同等の品質を誇るKTEはオーソドックスティーにこだわり、本来の味を乱すような余計なものを混ぜるとは邪道だと言わんばかりに露骨に嫌がりました。ネパリは既存商品のリーフティーやティーバッグと同様、マサラティーも有機認証を受けたものにするために、認証を直ぐに得られるKTE周辺のスパイスを使用し、カレーセットを作ってもらっているカトマンズの生産者スパイシー・ホーム・スパイシーズ(63頁参照)に依頼してティーマサラを調合し、紅茶とセットで販売しました。紅茶の販売がまだ軌道に乗っていなかったKTEはその好調な売れ行きを見て、他の取引先にジンジャーやレモングラスなど、スパイスやハーブと混ぜた紅茶を提案してみたところ、ヒット商品になりました。
 そこで、2000年から販売開始したスパイス製品の全種を有機栽培のものに切り替えたいと模索していたネパリは、東はKTEに協力してもらいオーガニックスパイスの生産に取組むことになりました。紅茶栽培のように換金まで数年を要する作物の栽培ができない、フィディム地域の困窮している農家の収入手段としても有効な、スパイス栽培への本格的な取組みはこうして始まりました。

遠隔地の生活向上に寄与するために

 紅茶、コーヒーと違い、スパイスは多品種を必要とするため、栽培地域も広く分散しています。暑く湿気のある土地でなければ採れないスパイスもあれば、寒冷地や乾燥した場所が適したスパイスもあるからです。ネパリは小規模な組織や、より困窮している生産者と一人ひとり密接に、きめ細かく関わろうとするため、異なる地形や気候で栽培条件や生活環境が違い、また文化や習慣なども様々な生産者とつながることになるスパイスはより困難を極めます。紅茶やコーヒーでの成功や失敗などの豊富な実体験がなければ、とても取り組めるものではありません。
 スパイスはNTFP(Non Timber Forest Products)に属しています。NTFPとは、成長が早いため環境にやさしく、また、短期間で現金収入を得られる植物として、国際協力機関が重要視している作物ですが、いまだ市場につながり収入を得るところまで至った組織はありません。スパイスは生産から加工に至るまでの工程が複雑で、利害の異なる関係者が多く絡むため、現地と深く関わり市場も持つ、ネパリのような存在が必要とされています。
 遠隔地になればなるほど、有機スパイスの生産に適した場所が増えてはいきますが、人々の生活は厳しくなります。流通の不便さから近隣の小さな市場での販売に限られてしまい、遠方の大きな市場へのアクセスが難しく、安定した収入を得られないからです。流通の困難さはまた、近隣への供給であれば問題が起きなくとも、遠方では時間がかかり過ぎてカビが発生するなどの品質上の問題も引き起こしてしまいます。このような環境にある農民にとって、技術供与などの必要な支援をし、世界の市場との中継点となるKTEの存在は大きく、そのイニシアチブを取る私たちの活動はとても重要です。

課題改善への取組み

 現在の大きな課題は、品質向上と安定供給をいかに図るかです。基本的には、それぞれのグループの主要アイテムを絞り、責任を明確にし、より改善がしやすいようにすることです。そして、アイテム毎に2つのグループが栽培を担うようにし、収穫が予定通りにいかなかった時に補い合ったり、品質を競い合ったりするようにします。小さなグループは、伝達がしやすくまとまりも良いのですが、生産量に限界があります。また、大きくなったグループは、私たちのように必要量が少なく収穫を全量買い取ることができない場合、メンバー間の調整が大変です。同じグループのメンバーであっても、それぞれ状況や収穫量が違うのでどうしたら皆が納得でき、力を合わせることができるのか、グループ内部のバランスにまで気を配らねばなりません。紛争の種にならないような配慮が必要です。
 気候変動の影響が増せば、これまで自然乾燥できていた収穫時期に雨が降るという危惧もあり、数ヶ月の保存に耐えるよう乾燥が十分にできる設備がそれぞれのグループで必要になってくるでしょう。ジンジャーのように栽培過程も含め虫が付きやすく苦労の多い種類もあります。自然が相手である以上、課題はつきませんが、これからも、人々の生活向上に役立つことを願って挑戦して参ります。

フェアトレードのお店紹介 (vol.33)

●山口県
ほっこり和めるお気に入りが見つかる店
うたちゃんの店スタジオT’s

 柳井駅から徒歩10分ほど。住宅街の白い家が「うたちゃんの店」です。本当は「スタジオT’s」という店名なのですが、店主の吉﨑歌子さんの愛称で呼ぶ「うたちゃんの店」の方がメインになってしまいました。
 お友達が一人暮らし用に建てた住居を、転勤で不在になるということで1996年に購入し、越してきました。ギャラリーにしていた時期もあるというおしゃれな建物に触発されたのか、店をやりたいという以前からの思いが大きくなり、引っ越して半年後に起業。好みの衣料や雑貨の小売店を始めました。お客様からの要望もあり、数年後には古物商の免許を取り、オークションに参加してアンティークも置くようになりました。カナダ、イギリス、アメリカのアンティーク、日本の骨董、古道具を扱っています。玄関から中2階、階下のリビングへと、所狭しと飾られた雑貨は宝探しのようで、いくら見ていても飽きることがありません。
 月に何回か仕入れている新商品は、ブログに写真つきで紹介しています。車で5分ほどの旭ヶ丘に建てたミニログハウスには、洋風アンティークを限定して置いています(14:00~18:00、水曜定休)。
 ネパリの商品は、本屋でカタログを見つけ、自然素材が気に入って、まずは自分用に購入。実際手に取ってみて良かったので、商品アイテムは限られるものの、スプーン、アイピロー、フェルト小物、衣類など気に入ったものを厳選して店に置いています。「親の経済状況の改善が子どもたちの教育向上につながるというネパリの考えや、紙布や柿渋、サヌ・バイさんの小物など、手作りの行程を大切にする姿勢にも共感しています」と吉﨑さん。いい出会いがきっと待っています。ぜひお気軽にのぞいてみてください。
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店主:吉﨑歌子 〒742-0021 山口県柳井市柳井3867-2
Tel:0820-23-7242 Open:11:00~19:00(10~3月は18:00まで)(定休日:水、第4火曜)
HP:http://blog57615.blog104.fc2.com/
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●岡山県
Happy Happyで世界を変えるお店
コットン古都夢

 後楽園のすぐ近く、大正時代に出石街の公会堂として建てられ、戦争でも焼けずに残った洋風の建物の1階が「コットン古都夢」です。仕事をしている人、主婦などさまざまな人が集まり、奥津幸さんを責任者として、1988年7月にオープンしました。
 始めた頃はフェアトレードという言葉もなく、環境を守る市民運動として活動していました。石鹸利用を広めるために販売するとともに、海外の支援もと考えて、国際協力団体のアジアの手工芸品やコーヒーなどの商品も置きました。近隣の女性たちの手作り品もあれば、インドネシアやタイの服もありました。
 最初の頃は、国際協力の商品は少なく、カタログもありませんでした。そのうち、フェアトレード団体ができ、ネパリ・バザーロができ、取引相手や商品が増えていきました。ゲストを呼んで交流会を開き、貸本コーナーを設け、女性の集まる場を提供してきました。国際協力の知識は来店したお客様から聞いて勉強しました。フェアトレードも同じように学びました。自分の考え方にフェアトレードがマッチし、取り組みたいと思いました。
 ネパリ・バザーロは、ナチュラルさが特長で、トンボ玉ネックレス、アイピローなどの雑貨が人気です。コーヒーや紅茶は継続的に買ってくださる方がいます。いらっしゃるお客様には、価値を理解してもらえるよう、一人ひとりに合せて商品の背景を伝えています。
 近隣でフェアトレード専門店はここ一軒なので、講演に呼ばれることも多くあります。マスコミや大学などでフェアトレードが話題に上がるようになったのはここ4、5年のこと。岡山大学は大学祭で販売してくれ、継続した交流をしています。学校関係者も授業で扱う情報を得に来店します。牛窓や岡山の店などに卸もしています。「AMDAもあって熱心な県といわれていますが、地方にまで少しでも広まっていくように地道に活動していきたい」と語る奥津さんです。
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店主:奥津幸 〒700-0812 岡山県岡山市出石町1-8-6
Tel&Fax:086-225-4663
Open:10:00~18:00(定休日:日祝(カフェは営業)) 
HP:http://www10.ocn.ne.jp/~cotom/
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●青森県
フェアトレード×地元で楽しく健康に!
風のひろば

 「風のひろば」は、十和田アーケード商店街にある、服飾、小物雑貨、天然素材のスキンケア商品、無添加の食材などを取り揃えたお店です。宮崎季子さんが2005年に始めました。
 きっかけは13歳の頃。進路に迷っていた時にアフリカの番組をテレビで見ました。飢餓に苦しむ子の瞳が画面を通して衝撃を与えました。食べられる状況を作るため現地で農業を教えたいと考えて農業高校、大学農学部に進学しました。しかし、経済システムを学ぶうち、発展途上だからとか、怠けているから彼らが貧しいのではなく、教育、経済、政治などが複雑に絡み合っていることがわかってきました。中学生の時は途上国側の問題だと思っていたことが、先進国側の利益が優先される社会構造の問題だと気づき、援助とは何かと悩みました。卒業後、身の丈で納得のいく国際協力ができるフェアトレードを知り、地元で店を始めることにしました。
 ネパリの商品は開店前にイベント販売していた頃から扱っていました。「ネパリは不器用な魅力というのか、素朴でオリジナリティがあります。私もパンツは毎日のように履いています。食品や雑貨などは感性にピタッと会う人は迷うことなく買っていかれます。同じ服をまた買いに来る人もいて、他にない存在なのだと思います。イベントでファッションショーを行い、お客様がモデルになり盛り上がりました。高校で話をするなど開発教育にも力を入れています。1対1で伝えていくことが、遠回りのようで一番の近道だと思っています。一人ひとりが考えて行動することが世界を変えていくと信じています」と宮崎さん。
 カフェスペースは、宮崎さん一人ではなかなか手が回らずにいたところ、羽沢友佐さんが客として訪れ、ぜひシェフとして自分の腕を振るいたいと申し出て、カフェを経営することになりました。北海道でシェフとして働いていた羽沢さんは、2009年からランチも始め、自家・地場の無農薬野菜、古式醸造法の調味料やオーガニックの食材を使った、おいしい雑穀キッシュやデザートなどを提供しています。雑穀豆カレーは、ネパリのスパイスを使っています。「力のあるスパイスなので少量でもしっかりと効いて、おいしい。他のものは使えない」と絶賛してくださいました。
 5年間愛されてきたお店ですが、2011年1月にこれまでの店舗は「Farm&Cafe Orta(オルタ)」と名を変えてカフェのみとなり、販売の「風のひろば」はすぐ近くの宮崎商店内に移りました。場所は変わっても想いは同じ。両店舗合せて、どうぞ訪ねてみてください。
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店主:宮崎季子
〒034-0011 青森県十和田市稲生町14-41
Tel&Fax:0176-25-1811
Open:10:00~18:00(定休日:毎月第一日曜)

旧風の広場cafeがリニューアルオープン致しました。
「Farm&Cafe Orta(オルタ)」
店主:羽沢友佐
〒034-0011 青森県十和田市稲生町15-16中央ビル1-1
Tel&Fax:0176-25-0185
Open:12:00~21:30(定休日:月曜、但し祝日の場合は翌日)
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青森に広がるパートナーシップ・ネットワーク (vol.33)

 始まりは、ネパリ・バザーロ代表土屋春代さんと、橋本司さんとの出会いでした。八戸で行われたセミナーに参加した司さんは、そこで講演をした春代さんに深い関心を持ち、終了後の交流会で春代さんの隣に席を得て話しこみました。すっかり意気投合した二人は、その後も連絡を取り合い、時には司さんが横浜まで来て、春代さんの家に泊まりこみ、夜遅くまで話をすることもありました。春代さんやネパリ・バザーロを応援したい、自分も関わりを持ちたいと思いましたが、故郷の八戸を離れることはできず、八戸にいながら自分なりの方法でネパリを応援しようと決意し、自宅でネパリの商品を販売し、ネパリの活動を周りの人たちに紹介することから始めました。そんな司さんを2010年9月に訪ね、司さんとつながり、同じ想いでネパリを応援してくださる方々にもお会いしてきました。
文:魚谷早苗(ネパリ・バザーロ ボランティアスタッフ)

★お店で
たくさんの人においしい笑顔届けたい
 三叉路の魔よけとして庚申様が祭られた交差点にある、黄色い看板の「宇宙の贈り物」。2005年に三浦眞理子さんが始めたレストランです。一番の特長は赤ちゃん連れで安心して過ごせること。ゆったりした室内、おむつ替えも余裕でできる広いトイレ、そして月齢に合わせたバリエーションが揃っている安全な離乳食がメニューになっています。離乳食は、かかる手間は大きいのに食べる量はほんの少し。大変ですが、お母さんたちがくつろいで集える場所を提供したい、と始めました。大人のためのメニューも、添加物、農薬を除去し、厳選した調味料を使用したランチやデザートが楽しめます。三浦さんは2008年に日本雑穀協会の雑穀アドバイザーの資格を取りました。現在全国に約60名の取得者がいます。雑穀は元気の元、ブームになる少し前から注目し、研究を重ねてきました。
 ネパリとの出会いは、開店して1、2年経った頃。司さんの自宅ショップを訪ね、自然食の一環としてネパリの商品に共感し、店の一角を司さんに提供し、食品や雑貨を紹介しています。さらにスペースを広げようと計画中だとか。三浦さんの人生の目標は、支えあうこととみんなの笑顔。「笑顔を見るのに一番いいのは、食べること。店を通しての出会いが何よりうれしい」と今日も腕をふるっています。

★お店で
厳選食材を気軽に楽しめる憩いの場を目指して
 住宅街の、手入れの行き届いたアプローチを抜けて中に入ると、明るい厨房とゆったりと過ごせるカフェスペースの店内。「天使のえくぼ」は、健康を重視し、食材を吟味した、こだわりのパン屋さんです。店主の中西美智子さんは、夫の修二さんが病気をした時に仕事を辞め、看病の合間に以前からの趣味だったパンを焼いて知り合いに配っていました。アトピーの人も多かったので有機など食材は厳選しました。夫の病気から、自身の生き方などいろいろと考える中で、人々が集える場を作りたいと思い、2005年に「天使のえくぼ」が生まれました。
 始めは町中に場所を借りましたが、半年後に自宅を大改築して店舗と喫茶スペースを作りました。朝3時に起きて、無添加の野生酵母「白神こだま酵母」も使用して仕込みをしています。「こだわって作っているので、本当にニーズのある人に合わせたパンを作りたい。大勢にではなく、難しい要望を抱えた一人ひとりのオンリー・ワンでありたい」と一緒に働く修二さんが力強く語ります。山あり谷あり、紆余曲折でやってきました。ネパリの商品を置くことになったのは、近くに住んでいた司さんから聞いて、「仕事を育てる」という発想に共感したためです。「寄付には限界があります。努力してこそ未来があります。司さんと会わなければ知ることのなかった世界に出会えました」と、小柄な体と穏やかな笑顔で忙しく立ち働く美智子さんです。

★学校で
学校全体で考える貧困問題への取り組み
 司さんの夫、卓さんが4年前に八戸市立鮫中学校に赴任した際、司さんに勧められ、同僚への挨拶の品としてネパリのコーヒーを持っていきました。皆、好意的にネパリの説明を聞いてくれ、今では先生たちでお金を出し合ってネパリのコーヒーを常備しています。
 卓さんは横浜まで出向き、ネパリ主催のハンガーバンケットと貿易ゲームに参加しました。ぜひ自分の学校でもと思い、毎年生徒たちと貿易ゲームを行っています。ゲーム終了後には、どうやって解決しようとしたか、何が大切だったかなどの振り返りを行います。毎年行うので、一人の生徒が計3回行うことになり、翌年には違うことに気づいたりして、成長が見られます。研究授業でも取り上げられました。
 そうした取り組みの中、貧困問題に関心を持つ教員も増えました。何かあるごとにネパリを話に出したり、商品を持ち込んだりしたサブリミナル効果だと卓さんは笑います。
 今は、ペットボトルを集めて換金し、ベトナムの学校の成績優秀者に自転車を送るという国際支援をしています。卓さん自身もベトナムの子どもたちに会いに行き、本の少ない学校に日本の絵本を翻訳して贈っています。
 「中学生は、『正』と『悪』に悩む多感な時期にあります。『正義』に敏感で、ある意味とてもロマンチスト。国際支援やフェアトレードの考え方がスウッと入っていく子もいて、この年代にこうした機会を持つことができるのは、とても有意義なことだと感じます」と語る卓さんです。

★学校で
ファッションを通じて世界とつながる
 県立弘前実業高等学校の山内最子先生は、司さんの友人です。司さんからネパリのことを聞いて興味を持ち、なにか自分もと思いましたが、それが何なのか考えて、たどり着いたのがネパリの布地を使ってファッションショーの衣装を作ることでした。
 毎年行われている服飾デザイン科のファッションショーは今回2010年9月5日が17回目。3年生の生徒たちが、型紙から衣装製作まで行い、デパートの中のホールで自らがモデルとなってオリジナルの服を披露しました。今回のテーマは『Pray(願い)』。生徒たちは『布を通して世界平和を訴え、自分の未来に繋げられるように』という思いを込めて服作りに取り組みました。
 半年前の2月から準備が始まりました。青森県の伝統工芸である津軽塗のボタンをあしらった衣装や、修学旅行で訪れた韓国をイメージした衣装など10のテーマに分かれた一つに、ネパールの布を通し国際貢献を模索するというテーマが加わりました。生徒たちは服のデザインを考え、サンプルから布地を選びました。生成りのレース織りをグラデーションに染めた服、いろいろな柄の手織布をパッチワークした服、紙布を使った服など、天然素材の質感を活かしながら、オリジナリティあふれる服が16着完成しました。実際の布が届いてみると小さな見本の布で考えていたのとイメージが異なっていたり、手織りは解けやすくて縫うのに苦労したり、いくつも作ったリボンが同じ形にならなかったり…でも、できあがって身にまとうと、肌触りや着心地が良く、苦労も吹き飛ぶ喜びだったようです。
 ショー当日は、司さんはもちろん、「宇宙の贈り物」の三浦さんも八戸から応援に駆け付け、生徒たちの熱気に大感激でした。山内先生は、ネパールとの関わりをこれからも継続していけるよう、来年以降もネパールの布地を使ったファッションショーを計画しています。

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本物が持つ力
ネパリとの出会い

青森県立八戸第二養護学校 教諭 橋本 司

 「特別支援教育と国際協力ってなんか似ているな」と漠然と感じていた頃、春代さんが青森開発教育講座のゲストとして我が郷土八戸へ。そこでフェアトレードの仕組みを教えていただき、国内での作業の一部は福祉作業所に委託しお互いに手を取り合う仕組みを作っているという話を聞きました。さらに会場では、実際にネパリ商品を販売する機会を得、春代さんの話を聞いた人たちは次々にネパリの商品を手にし、購入する様子を目の当たりにしました。地方都市八戸で決して安くはないフェアトレード商品が次々に売れる様子を見て、「商品に語る力があればどこにでも通用する」と気づかされ、「これだ!フェアトレード商品を教育に生かそう。みんなが誇りに思う活動に取り組もう」とそのとき決心しました。
 それから十数年間、教員仲間には必ずネパリ商品を紹介したり自宅では展示会をしたりして、自分ができる範囲で活動をコツコツと続けていました。(相方には、学校で職員が飲むコーヒーをネパールコーヒーに替えてもらったり…)すると、今年の夏の終わりにうれしいニュースが。教員仲間の一人、山内最子さんが、生徒達が作り上げるファッションショーにネパリの布を教材として使い、弘前のデパートで発表してくれたのです。ネパリの布を身につけて、生徒達が向こうから歩いて来たときは感動で胸が熱くなりました。
 そして、今年の秋ようやく勤務している特別支援学校の作業学習にフェアトレード商品の値段付けを取り入れることができました。これはフェアトレード商品を置いてくださっている天使のえくぼさん、宇宙の贈り物さんのご協力があるからこそできたことです。作業学習での取り組みはまだ始まったばかりで、生徒も先生も今は、新しい活動を軌道に乗せることで精一杯ですが、彼らがいつの日か、自分の取り組みが世界につながっていることに、世界の中でもしかしたらはじめての活動をしていることに気がついて誇りに思う日を楽しみにしています。

福祉プログラムレポート (vol.33)

 サポート会員の方々の会費を中心に、応援してくださる方からの寄付などを加えて、ネパリ・バザーロは子どもたちの教育支援、女性たちの自立支援を行ってきました。ホームの子どもたちへの支援は20年、セービングファンドも開始から4年が経ちました。継続的に行っている支援についてご紹介します。

◇セービングファンド
 働いて得た収入は家族のために使って、自分の手元に残せない女性たち。まとまったお金が必要な時に自分の意志で使えるお金を貯蓄するシステムです。毎月、女性たちと職場が同額(100~200ルピー)ずつ、ネパリが倍額を出して、一人ひとりの銀行口座に積み立てていきます。

◇カンチャンジャンガ紅茶農園(KTE)奨学金
フェーズ1
紅茶農園で働くワーカーの子どもたちすべてが基礎教育を受けられるようにと2002年に始めた支援。県立神奈川総合高校有志によるワンコインコンサートの収益も資金の一部になっています。2010年度は約40万ルピーの奨学金で150名以上の子どもたちが通学しています。
フェーズ2
10年生までの基礎教育を終えた子どもたちのうち、成績優秀で意欲のある子の専門教育を支援。2007年に3名、2008年に2名、2009年には8名、2010年には4名が進学しました。看護、農業、教育、商業など、卒業後に村に貢献できる専門知識を意欲的に学んでいます。

◇キサン民族への奨学金
厳しい状況におかれている、東ネパールの少数民族キサンの子どもたち・若者たちが、必要な教育を受け自立できるよう支援を開始しました。2010年7月に若者たち7名の学費約30万ルピーの支援を行いました。

◇シリンゲのケサブさん学費
 シリンゲコーヒー協同組合の今後を担う人材育成のために、組合長のバドリさんを支える若きケサブさん(20)が農業の専門技術を学べるよう、まず、入学金6万ルピーを支援しました。

◇トゥリさん家の子どもたちの奨学金
 竹かご職人のトゥリさんの子どもたちが継続して学校に通えるよう、2006年から学費支援をしています。落ちこぼれて自信をなくした子どもたちが授業に追い付けるように依頼した家庭教師も含めて、現在3人の子どもたちを支援しています。

◇モーニングスター・チルドレンズ・ホーム
 身寄りのない子どもたち50人以上を家族同様に育てているビシュヌさん夫妻が運営するホームです。1991年に、代表の土屋春代が初めてネパールを訪れて以来生活費支援を継続。水道設置費、障害のある子の義足代などのスポット支援も必要に応じて行ってきましたが、レギュラーサポートとして現在は月50,000ルピーをお渡ししています。

1ルピー=約1.3円

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■スパイシー・ホーム・スパイシーズ
2007年1月開始。現在の対象者7名。
■コットンクラフト
2008年4月開始。現在の対象者26名。
■ヤングワオ
2009年1月開始。現在の対象者12名。
■コーヒー選別の女性たち
2010年1月開始。現在の対象者5名。
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