≪社会とつながる女性たち≫

ネパールの首都カトマンズ近郊3郡では、3月末から現在まで、1度解除はあったものの、ほぼロックダウンが続いています。市民も限界で、先週から行動規制やや緩和されたため、生産者団体は少しずつ仕事を再開していますが、通える女性たちはわずかです。
私たちがお付き合いしている生産者団体「マヌシ」の代表、パドマサナさん。彼女はあらゆる女性問題の背景に貧困が大きく影響していることを実感し、30年ほど前、ハルチョーク村に通いました。貧しい村の女性たちに技術指導をして、収入を得られるようにするためです。訪問を始めた頃、男性たちは家々の窓を閉め、女性たちを隠しました。女性にいらぬ知恵をつけられて男性に逆らうようになっては困るというのが理由でした。歓迎されぬ村に通って、一人、また一人と集めてやっと12人の女性グループを作って、縫製指導を始めたのが「マヌシ」の始まりです。
家から外に出て、社会とつながった女性たち。新しいことを学び技術を身につけ、収入を得た女性たちは、どんどん変化していきました。仕事を通して得た誇り、誰かに必要とされている実感から湧き出る喜び、いきいきと輝いていく姿は、本当にきれいで嬉しく、彼女たちの変化を見て、人はこんなに変われるんだと勇気をもらいました。
現在、コロナ禍のステイホームで、女性が社会から再び切り離され、大家族の中での生活をしいられています。この30年で随分状況は変化しましたが、大切にされず、人としての尊厳を失ってしまうような扱いは至る所で数多く見聞きしてきました。
先日、ある生産者のお姉さんが、泥酔してお金を要求してきた夫と夫の兄に殺されてしまうという悲しい事件がありました。とてもショックでした。ステイホームで家族間の問題が噴出し、追い詰められた末の自殺や殺人事件が、コロナ禍で2500件以上、毎日のように起きているそうです。ネパール大地震後も多発していました。ひとたび社会不安が起こると、何層にもある差別構造の中で、常により弱い立場の方々が暴力を受け、苦しめられています。同時に、自分自身の心の中にも差別の芽がないだろうかと、つきつけられます。
ロックダウンが終わったからといって、女性たちがすぐに職場に戻ってくることはできません。いくつもの困難な要因を乗り越え、時間をかけてやっと社会とつながり始めた女性たち、その糸を切ってしまわないように、生産者団体のスタッフは自宅を訪ねたりと必死です。少しでも職場に通い、社会とつながり続けてほしいと、心から願っています。

2020.9.16

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