ネパリ・バザーロの服づくりのこだわり:リメイクで新たな命を! (vol.31)


 最近、マーケットでは安価な服がたくさん出回っています。東京の地価の高い一等地に店を建設しても、安い服で楽に経営ができるほど大量に売れるようです。一着の服を大切に長く着るより、その時その時の気分で選んではあまり着ないで捨ててしまう人が増えているのかもしれません。安く作るには素材を大量に仕入れて原価を下げられるだけ下げ、それを労働力の安い国の大規模な工場で短時間に作って売るのですが、まるで洪水のような商品の流れ方です。本当に洪水のようなものすごいパワーで環境も人と人のつながりも破壊してしまうのかもしれません。ネパリ・バザーロの服はそれらの服と比べると価格は少し高目です。しかし、環境になるべく負荷をかけないように、貴重な自然素材を無駄なく使い、自然染料や安全な化学染料で時間をかけて染め、一枚一枚裁断や縫製をし、丁寧に作り上げているので、単純比較はできません。そして、どのデザインも少量しか作りませんから、まるであなたのためだけに作られたような貴重な服です。あまりにも着心地がよく、他の服は着られないと言ってくださる方も多いほど好評です。
 その服には他にもたくさんのこだわりがあります。それは共に生きる社会、人と人が支えあい、大切にしあう社会を目指す時、物づくりにも自然に表れるこだわりだと思っています。

仕事を創るためにも手間をかける

 服づくりは裾野の広い産業で多くの人々に様々な種類の仕事を創ることができます。そして、家に居ながらできる手仕事もたくさんあります。仕事を得る機会の限られた女性たちや昔からの伝統的な手仕事を続けてきた職人さんたちにとってうれしい仕事です。それを更に大勢の人の手が加わるようにデザインし、仕事を増やしています。
 それは、効率やコスト削減を優先したデザインと違い、着る私たちにとって、着ているだけでふんわりと包まれて大切にされているような、豊かで温かな気持ちになれる不思議なパワーを秘めた服になります。

最後まで売り切る

 自然界からいただいた大切な素材を端切れまで大切に使い、心を込めて丁寧に作り、多くの人々の温かい手を経て届いた服たちですから、最後まで売り切りたいと努めています。デザインなどの企画からサンプル製作、オーダーへと続く中で、売れる数の見込みをたてますが、予想より人気があって直ぐに売り切れてしまうものもあれば、残ってしまうものもあります。残っても次のシーズンで完売することが多いのですが、離れがたいのか、まだ居残ってしまうものがあります。それをブラウスからワンピースに、ベストからチュニックにというようにリメイクしたり、新たな色に染め替えて再登場させます。そうやって長いもので3、4年かけ、全て離れていきます。長く居残った服たちに愛着が湧き、生まれ変わって行く先が決まると本当にうれしくなります。
 リメイクしたり染め替えたりなど様々に手を尽くし、最後まで正規の価格で売れるように努力をし、セールはしないようにしています。限りある自然界の素材を使い、手間をかけて作り、作る人も 売る人も、使う人も皆が納得できるよう考えて価格を設定していますから、その価格を否定するとどこかにひずみが出ます。それは持続可能ではなくなることを意味します。リメイクや染め替えはとてもコストと手間がかかるので、セールをしたり、廃棄してしまう方が楽ですが、同じ失敗を何度も繰り返すことにつながりかねません。環境を考え、作り過ぎないことが大切だと思っています。

値打ちと値段

 以前は身近に見ることができた物作りが遠く離れてしまい、お金さえ出せば何でも簡単に手に入るようになりました。最近では物づくりの大変さ、どれほど手がかかるか、大切なものか分からず「値打ち」を判断することができなくなり、買い物をする自分にとって都合のよい「値段」だけが基準になっているようです。値打ちのあるものを、長く大切に使えば自分にとっても地球にとっても、とても経済的ではないでしょうか。

これからも・・・

 時代に流されず、これまで通り丁寧な仕事を続けていきたいと思っています。着る方の個性を爽やかにひきたて、長くご愛用いただけるデザインを心がけ、日々の生活を心豊かに過ごしていただくお手伝いができれば、生産者共々なによりうれしく思います。
 物を大切にすることは、人を大切にすること…と信じて。(文:土屋春代)

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