特集:地域開発 【コラム】ワイルドサーグとコーラ (vol.34)

 ネパール語で青菜のことを「サーグ」と言います。KTEの宿舎の料理担当、パルシュラムさんがある日のランチに「ワイルドサーグですよ!これはおいしいですよ!」と、うれしそうに青菜炒めを出してくれました。「本当だ!ものすごくおいしい!」ディリーさん(*1)と私はパクパク。しかし、農園の健康的な食事がなぜか合わない完二さんはほんの少ししか口にしませんでした。
 
 食後、奨学生2人にインタビューしている間、強烈な睡魔に襲われ、足許はふらつき、ろれつは回らず。静かだったディリーさんも、実はものすごく眠かったことが、夕食の時に判明。あのおいしかった青菜に毒草(薬草?)が混ざっていたのかと笑い話になりました。KTE周辺はアーユルヴェーダの薬草の宝庫だそうです。使い方によって怪我を治したり、病いを癒したり、健康な生活の支えとなるでしょう。フェーズ1(*2)の自立計画の中にも、アーユルヴェーダクリニックの構想があります。

 ワイルドサーグをほとんど食べず、ひとり何ともなく「何事も節制が肝心!」と威張っていた完二さんは、農園のベジタリアン生活になじめず食が細くなるばかり。心配したディリーさんの配慮で、とうとうインスタントヌードルを作ってもらうことになりました。パルシュラムさんはインスタント食品が初めてで「ナヤアイテムバエコレ…(作ったことがないからどうしよう:意訳)」と、かなり緊張していました。最初は失敗。あまりに塩辛いのでお湯で薄めていただきましたが、翌朝にはとてもおいしいヌードルとチャーハンができていました。「おいしい! おいしい!」と完二さんは何度もお代わりしていました。化学物質に汚染された食生活がバレバレ。

 かくいう私も、ネパールの地方に行くとなぜかコーラを飲みたくなり、一番近い街、フィディムバザールまで、完二さんと往復1時間の山道を歩いて飲みに行きました。1本の生ぬるいコーラを2人で分け合い、かなり高い値段を払わされ…とほほ。
(文:土屋春代 ネパリ・バザーロ代表)

*1…KTEの役員。カトマンズ事務所とフィディムの農園を頻繁に行き来し、企画立案や調整を精力的にこなす。55歳の彼は、後20年は仕事にその身を捧げ、引退後は瞑想生活に入ると言う。
*2…KTEの子どもたち全てが10年生までの基礎教育を受けられるようにと、ネパリとKTEが始めた奨学金支援制度。

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