福祉プログラムレポート: ビシュヌホームを巣立った子どもたち (vol.32)

ネパリ・バザーロが1992年から生活支援を続けている「モーニング・スター・チルドレンズ・ホーム」は、ネパール人のご夫婦ビシュヌさんとムナさんが、自宅に身寄りのない子どもたちを引き取り、家族同様に育てているホームです。出会ったころは7、8名の子どもたちでしたが、経済状況の厳しさが続く中、政情不安も重なり、多くの子どもたちが行き場を失い、ビシュヌさんのホームに身を寄せるようになり、常に50名以上の子どもたちが暮らしています。親を亡くした子、災害で家族離散してしまった子、マオイストに親を殺された子、親がいても養育を受けられず街へ出てきた子・・・ビシュヌさんとムナさんの温かい愛情と、子どもたち同士の交流で、明るい笑顔を取り戻し、元気に学校に通っています。

 1990年に子どもたちを引き取るようになってから今までにホームを巣立っていった子は300人にもなります。ホームを離れてからも近況を伝えてくれるそうです。学校の教師になった子が約50名。外国に出稼ぎに行っている子、自分で事業を興した子もいます。8割近くの子が結婚しています。
 ビシュヌさんたちの実の娘のジョティ・パラジュリさん(21)は、共に育ったスニタ・タマンさん(24)と一緒に2008年に看護学校を卒業し、病院でのトレーニングを受けています。
 子どものころから下の子の面倒をよく見ていたサビトリ・シュレスタさん(28)は、2002年に結婚してホームの近くに住んでいます。2007年にネパリのスタッフ、ボランティアが大勢でホームを訪れた時には夫や子どもと一緒に駆けつけてくれました。
 アルジュン・ダカルさん(32)とレベッカ・ダカルさん(27)の兄妹は、ネパリが支援を始めたころからホームにいたので、私たちにとっても思い入れの深い二人です。アルジュンさんは高校卒業後、ネパリの支援で大学に進み、卒業後はビシュヌさんの紹介で教会関係の出版の仕事に就きました。ホーム最年長のしっかり者で、ビシュヌさんの片腕となり頼りにされていましたが、本人の希望で部屋を借りて独立しました。2003年に結婚し、身寄りのない子を引き取り、ホームを始めました。今はNGOでマネジメントの仕事をしながら10人の子どもたちの面倒を夫婦で見ています。レベッカさんは卒業後ホテルの受付の職に就きましたが、2004年に結婚し、夫の働くアブダビへ移りました。二人の男の子の母親となり、最近カトマンズに一家で戻ってきました。

「ネパリ・バザーロの皆さんが20年近くにわたりモーニング・スター・チルドレンズ・ホームを支援してくださっていることを、とても幸せに思います。また、以前私に教育支援をしてくださったことも深く感謝します。私には親のない、貧しく、恵まれない子どもたちへの強い想いがあります。自分も同じ境遇だったので、彼らの気持ちがよくわかります。ホームの運営には多くの困難も伴いますが、ネパールのこうした子どもたちを助けたいという想いが変わることはありません」(アルジュン・ダカル 2010年5月)

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