第8号−2

もくじ

◆会の名称が変わりました
◆ネパールからのお便り
◆ヒンズー教の生活
◆ネパールの女性売買(本のご紹介)
◆ネパリ・バザーロからのお便り
◆ご寄付ありがとうございました
◆編集後記


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◆ヒンズー教の生活
   サマル・マン・シュレスタ
 ネパールの宗教は大きく二つに分かれています。ヒンズー教とチベット仏教であるラマ教です。ネパールには36の様々な民族が住んでいますが、アーリヤ系あるいはインド系とチベット系に分けることができます。そしてその宗教と民族は一致していると見ていいでしょう。つまりアーリヤ系のほとんどはヒンズー教徒であり、チベット系民族のほとんどがラマ教徒であるわけです。割合としてみてみるとヒンズー教86%、ラマ教及びその他の宗教が14%となっています。
 
 さて、1991年ネパールの民主化により憲法が改正され王制から「立憲君主制」に変わりました。それにともない宗教の自由も認められるようになりました。それまでは王家を中心とする支配階級がヒンズー教だったために国教はヒンズー教となっていました。現在でもネパールの主な宗教はヒンズー教であり国民の日常生活に大変強い影響を与えています。例えば母親が亡くなったら末の息子は髪の毛と眉毛を剃らなければなりません。そして13日間1日1食だけの食事しかとれないのです。1年間頭から足まで白い服をつけなければなりません。一方父親が亡くなった場合は長男が同じことをします。夫が亡くなったときは妻が同様に行動しなければなりません。以上は極一部の例であり、まだ他にも数えればきりがないほど宗教が生活に入り込んできています。
 
 さて、ヒンズー教と聞いてイメージするものがあると思います。カーストという言葉を聞いた人は多いと思いますが、これは人間を生まれつき大きく4つの階級[バラモン、チェトリ、ウァイシャ、シュドラ]に分けてある身分制度です。以前は結婚も同じカーストの者同士でなければ許されませんでしたが、最近では昔ほど厳しくなく違うカースト同士の結婚も時々見られるようになりました。違うカーストの夫婦の子供がどのカーストに属するかも詳しく分類されています。また、最下位のシュドラの中の「ポデ」というカーストは大変強い差別を受けます。例えば子供たちは学校へお弁当を持っていきません。なぜだかわかりますか? もし途中でシュドラがそのお弁当に触ってしまったらそのお弁当が汚れるので食べられなくなるからです。このシュドラはお茶を飲みに入る時、自分のカップを店に持っていかなければならない場合もあります。なぜならお店のカップが汚れるからです。  ネパールの憲法ではカーストによる差別はされていませんが、現実の社会においては根強く残っており、就職・結婚などに関してははっきりとカーストによる違いが認められています。
 
 それではネパールの女性はどうでしょう。女性に対しても差別があります。なぜならヒンズー教の教典に、女性は汚れた者と書かれているからです。現在でも女性は様々な差別を受けていますが主なものに3つあります。出生、教育、職業の差別です。女性は生まれながらに差別されています。もし産まれた子が女の子だと家族には喜ばれません。理由は結婚するとき持参金を持たせなければならないからです。ですから女の子が産まれると皆秘密にしたがります。ヒンズー教の教典の中に女性は100人の息子を生むことが望ましいと書かれているように、女性の務めは男の子を産むことだとされています。ですから男の子が産まれるまで子供を産み続けなければなりません。そのために人口がますます増加するのです。次に男の子と女の子では教育を受ける権利にも違いがあります。これは男女の識字率の違いにも現れています。女性の識字率は男性に比べて大変低くなっている上に就職先もありません。そのため女性が生きていくためには結婚しか道がないのです。ネパールの人口の90%以上は農民です。女性は畑仕事、家事もすべてしなければなりません。といっても、日本のように便利な機械があるわけではないので、すべて時間を使った労働になってしまいます。その上、水牛などの家畜を使えるのはやはり男性だけですから女性の労働がどれほど厳しい現状にあるか想像してみてください。家事に関しても同様です。日本のようにガスや水道、電気があるわけではないので、食事を作るためには、まず薪を集め、水を汲むことから始まるのです。これらはすべて女性の仕事です。
 
 このようにカースト制度に基づいた身分制度や女性差別が、人口も増加させています。家族が増えればそれだけ必要な食糧も増えます。それが貧しさの原因になり、その結果生活に追われ教育が受けられなくなるのです。また、少しでも生活が楽になるようにと子供を多く産み、働き手を増やそうとします。このような悪循環が現在もネパールでは続いているのです。   
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◆ネパールの女性売買(本のご紹介)
書評:ローラン・マッソン
 概訳&注書:土屋完二
Red Light Traffic
(The Trade in Nepali Girls)
発行:ABC/Nepal(Agro-Forestry
Basic Health and Co-Operatives)
約60ページの本で、ネパールの少女・女性売買/売春問題(インドに売られるケースが焦点)を扱ったものです。主に、インドに売られる状況をABCがまとめて本にしました。 20万人が外国に売られています。
この本は、3点に分けられ、
1)ネパール女性の売春がおきる要因の分析
2)その結果としておきる
   社会と衛生上の課題
3)その問題に対する政府の対応
の構成になっています。
やや誇張もあるようですが、その事実は否定できません。特に、カトマンズを中心とした県の周辺地域が多く、山岳地帯で教育程度が低い地域と報告されています。特に注意を要する点は、組織的に行われていることです。そして、識字率との比較表を用いながら、教育の重要性も訴えています。政府もこれに対する対策を18年前にとろうとしましたが、注目するものなく4年後に廃止されています。そしてNGOによる対応プログラムが走りはじめました。(詳細略)
この本の中で特に訴えているのは、エイズ感染の問題です。1986年に初めて発見されたエイズ感染者は、1991年には25,000人、1994年に40,000人になっています。(詳細略)
本が書かれた時は1993年で民主化に移ったばかりの時であり、その詳細は書かれていません。でも、予算は、国が小さいのでその気で世界銀行に働きかければ対応は可能ではないでしょうか(ローランの見解)。問題は、政府の働きかけの欠如も一因しているでしょう。その根本は、政府自体がこの組織に関与している部分があると言われているからです。
本の結論は、NGOに対しもっと何かできないか。男女平等がなく、女性の労働が認められていない。女性の95%は農業従事者で、それは職業としては認められていない。その労働時間は、女性11時間、男性8時間。女児6才、男児11才から働き始める。この根本的男尊女卑が、この売春問題に対しても関係しているとしています。
(注)女性売買に関する改善抑止活動は、ABC/nepalとCWIN(Child Workers in Nepal Concerned Center)の現地NGOが活発に活動しています(byNEPALI WOMEN RISING)。ABC/Nepalは、1987年に、農業、森林、基本的健康ケアの開発と女性参加の共同組合の概念を創出する目的で設置されました。少女と女性の売買に対する事項を公知する活動も続けています。   
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◆ネパリ・バザーロからのお便り
                土屋完二
皆様の継続した御支援、本当に有り難うございます。この組織を作り、今の言葉でいうフェアートレード、オルターナティブトレードを目指してまもなく4年目の活動に入ります。
WSDP(女性の技術向上プロジェクト)をはじめ多くの生産者との取り引きは、意思の疎通、品質に対する感覚の違いなど様々な困難がありましたが、なんとか順調に推移して来ました。
たとえば、販売を受け持つあるNGOの売上げの10%を輸入しています。セーター、革製品、衣服と幅広く開発輸入してまいりましたが、その品質の向上は驚くほどです。衣服のパターンも、立体裁断に切り替えて着心地、スタイルも素晴らしく良くなっています。トレードを通じて仕事の機会創造と技術力の向上に少しは寄与出来たでしょうか。ここに至る皆様の御協力、本当にありがとうございました。
コーヒーの輸入及び販売は、オランダと時を同じくして始まりましたが、正式なネパール政府の許可PHYSANITARY CERTIFICATEの第一号となりました。品質をおとさず着実に進めれば、この産業がネパールの主要産業に育つと思われます。その農民の方々の状況を把握しながら、その地域全体が良くなるようにこのプロジェクトを進めたいと願っています。
最近は、人権問題が女性の権利や社会的地位とあいまってとりあげられることが多くなりました。ネパールでも女性の休息の日が出来たりと、新聞に載らない日はないというぐらい多く話題にもなっています。
とはいえ、学校はあっても行けない子、途中で止めてしまう子の多いことも事実で、取組むべき課題は多いのですが、少なくとも以下の言葉をヒントとして前進して行きたいと存じます。
児童労働からの解放に対して、次の言葉を添えて....「オルタナティブトレード」あるいは「第三世界ショップ」との協力は子供達の搾取や害悪から守るために推し進める必要がある....by CWIN from MISERY BEHIND THE ROOMS。
では、コーヒーの香りにつつまれて、充実した一時をどうぞ。   
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◆ご寄付ありがとうございました
大槻田鶴子様、磯村清治様・愛子様、増田学園菅沢様、 深山こう二様、道脇金蔵様、八田祐子様、みどりの学園一同様、 金沢かしの木学級様、小林映子様、奥山恵子様、箕輪京四郎様、 藤波暁子様、松井泰子様、横山勝代様、土屋かね子様 ・・・その他、ネパリ・バザーロの販売活動にご協力 いただいている多くの方々に深く感謝いたします。  
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◆編集後記
 今号は文化や本などネパールを紹介する記事が集まり、 楽しんでいただけたのではないでしょうか。 (早苗)
新しい形での支援活動をと模索を初めて4年が過ぎました。 具体的な目標が見えてきましたし、その効果も明らかに現れています。 見えれば見えるほどに課題も大きく深くなっていきますが、 メンバー一同協力して皆様の力を借りながら前進していきたいと思います。 (完二)  
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